嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
カラスが窓の側で止まる。
それを横目で見た誰かは一人、冷房の効いた[漢字]本棚部屋[/漢字][ふりがな]としょかん[/ふりがな]の中、機械いじりから手を離した。
ペンを回せないようなその人は、古びた万年筆を無意味にゆらゆらさせる。
先ほどまで記憶と意識がうつらうつらだったようだが、何とか意識を保っている。
この人は、これが終わったら思いっきり眠りでもつくのだろうか。
ふと周りを見れば、相変わらず本棚に鎮座する赤い本に青い本。
タイトルも様々で、50音順なんて序列は疾うの昔に捨てられている有様。
ハッピーエンドもバッドエンドも、メリーバッドエンドも...........トゥルーエンドも。
全部ここに揃ってる。
だけど分厚い本だけじゃない。
まだ薄っぺらいシナリオだけの本だって中にはたくさんあるし、
[太字]何なら、実を結ぶことなくお流れしていった紙切れ一枚だけだってある。[/太字]
正直なところ、ざっくり見ても薄っぺらい本ばっかりだとは思う。
______あえて言うのならば私は、ここの司書とでも言えばいいんだろうか。
[太字].................それとも、創造主って言った方がしっくり来るかな?[/太字]
[漢字]自暴自棄[/漢字][ふりがな]やぶれかぶれ[/ふりがな]に、無気力に力を入れずに、持ち主は[漢字]万年筆[/漢字][ふりがな]ペン[/ふりがな]を振るう。
モルフォチョウを彷彿とさせる蒼の線が引かれて、泡となって、
[太字]泡が弾けるとそれは、たちまちそれは魚になる。[/太字]
[太字][明朝体]『 タイヨウ 』
『 アオゾラ 』
『 サエズリ 』[/明朝体][/太字]
[小文字]「............。」[/小文字]
[小文字]「..............あぁ、そうだ。」[/小文字]
思い出したように一番奥を見つめた。
受付カウンターから見て一番奥に飾られた、無駄に大きな青茶の本。
ひらりとページをめくって、昨日書き溜めたページの分を確認する。
『 _______。 』
文字が、一つ一つ丁寧に書かれている。この感じだと問題はなさそう。
「あー疲れた。やっぱ運動不足かなぁ、ちゃんとしないと...........」
描いた魚は、餌を求める子犬のように主の周りをふよふよと泳いでいる。
文字はと言えば、一反木綿のよう自由に動き回り、本棚をすり抜けたりして遊んでいるようだ。
「 .............さーて、一旦[漢字]物語[/漢字][ふりがな]おはなし[/ふりがな]の[漢字]天の声役[/漢字][ふりがな]ナレーション[/ふりがな]も終わったわけだし。 」
「 まぁ、そろそろ動かないとだよねー............. 」
「 [太字].......................神様としても、ね[/太字] 」
シナリオライターとして。
[太字]私の仕事は、[漢字]演者皆の衆[/漢字][ふりがな]あなた[/ふりがな]の未来に寄生する事なのだ。[/太字]
[太字][中央寄せ]第4小節『 声も身体も 』End[/中央寄せ][/太字]