嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
なんやかんやあって、n日後。
※n = 自然数とする
ちなみに佐々木は有給を取った。消化するにはちょうど良かったらしい。
[中央寄せ]〜 レモンside 〜[/中央寄せ]
佐々木「お待たせしました、」
レモン「大丈夫っすよ、全然今来たとこなんで」
少しゆるめのタートルネックを着ている彼に目が慣れるまで数秒。
今の姿でも似合っているのは当然だが、やはりどれだけスーツ姿の方が似合うかと再自認する。
レモン「.........何かスーツ姿じゃないと違和感すごいっすね」
佐々木「確かに皆さんに会うのが大体仕事の合間ですからね.........」
レモン「まぁ雑談もほどほどにして、行きましょうか。」
そう、忘れちゃいけない一番の目的。
レモン「[太字]______『終点駅』に。[/太字]」
[水平線]
[斜体][太字]〝 4番線に、電車が参ります。黄色い線までお下がりください。 〟[/太字][/斜体]
軽快なメロディーの後、どこまでも聞こえるような芯の透き通った声が駅のホームを満たす。
止まってはどこかへ自意識に放たれていく鉄の箱をぼーっと眺めていたおかげでただただ瞼が重い。
あくびをして少しぼやけた視界の中、電車に乗り込んだ。
時間短縮のためにと乗り込んだ特急電車。
佐々木は少し後ろの方でスマホをいじっている。
多分マナーモード設定とかしてるんだよね、どうせ。
目線をスマホからこちらに戻した途端に目があって気まずくなったのですぐに視線を電車の方に戻し、終点駅に期待を馳せるだけだった。
[水平線]
[中央寄せ]〜 佐々木side 〜[/中央寄せ]
[太字][斜体]〝 4番線、間もなく電車が発車致します。 〟[/斜体][/太字]
電車の中、待ち時間と比べれば少し低めにくぐもったアナウンスが響く。
あえて形容するなら、それは『曇り空』。
[太字]______光差す道のない、そんな曇り空。
私は、あてもなくその曇り空の下を歩いている。[/太字]
端からすれば、私は社会の形からは外れてしまっている。
その自覚は、確かにある。
『もう一人の私』を抱えている私はもう、進むべき道を逸れている。
ある意味もう『外道』なのかもしれない。
この世界を見ている神様がいるのなら、聞きたい。
[太字]『 どうしてこんなに世界は[漢字]いきくるしい[/漢字][ふりがな]生き苦しい[/ふりがな]のですか。 』[/太字]
最後そんな事を虚ろに願いながら、私の意識は暗転していった。
[水平線]
〜 レモンside 〜
スマホに手を付ける。
こうやってメモを取っておかないと大体の事は忘れる。
メモがなければ記事は描けるものではないし、何を思い出すこともきっとできない。
[太字]______きっと、犯した傷跡の事以外は。[/太字]
やるべき事も進むべき場所もある、だから私は今日も歯車となる。
別にそこに不満はあるはずもないのに、幸福だってそこにあると分かるのに。
[太字]『 どうしてこんなに、[漢字]いきくるしい[/漢字][ふりがな]息苦しい[/ふりがな]の 』[/太字]
その胸の痛みをごまかすように、はたまた限界を迎えたように、すでに重たくなっていた私の瞼はゆっくりと落ちていった。
最後に、一瞬で通り過ぎていく踏切の音を耳にしながら。
[水平線]
[中央寄せ]NO side[/中央寄せ]
[太字]意識、自我、精神が、それらが、宿主の元に帰る。[/太字]
...............灰色のフィルターがかかって緩和された極彩色の視界から、薄らに光が通る
.........意識が戻るまでほんの数秒の体感だが、実際は何十倍何百倍何千倍といった時間が、後ろで過ぎている。
虚ろな視界、不定形になった頭の中。
何一つとして身体がカラダとなっていない。
[太字]そして『それ』は聞こえる。[/太字]
[太字][斜体]〝 ______次は終点、『 [漢字]戻界駅[/漢字][ふりがな]ライカイエキ[/ふりがな] 』 〟[/斜体][/太字]
[太字][斜体]〝 お出口は、右側です。 〟[/斜体][/太字]
[太字][斜体]〝 The next station is 『 Raikaieki 』______ 〟[/斜体][/太字]
[太字]______ぼやけているはずなのに、なぜかそれだけは鮮明に耳に届いた『魔法』だった。[/太字]