嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
お母さんによく言われた。
『やりたいようにやりなさい』って。
[太字]______ごめんねお母さん、言われても分かんなかったよ。[/太字]
[水平線]
昔から自分の好奇心に正直な人だったと今でも感じる。
当時の僕は、虫を捕っては眺めるのが大好きだった。
太陽に照らされて艶めく、金属みたいな体がカッコよくて、ついつい眺めてしまう。
そして何より、擦りむいた膝を治してくれる兄さんの優しさが大好きだったから。
..........と言っても、しばらくすれば治してくれる事もなくなってしまったが。
当時は、『子供らしいよね』とよく言われたものだった。
[太字]______今となってもあまり変わらなかった。[/太字]
虫を眺める事は相変わらず好きだ。
キチン質という物質で作られた、カブトムシの小豆色な外骨格はいつ見ても綺麗だった。
[太字]照らされて、白く光を映すのが綺麗で、その度にぼうっと眺めていた。[/太字]
よく言われた『子供らしいよね』という言葉は、[太字]いずれ冷笑を含むようになった。[/太字]
そう言われる度に続けて良いのかと、何度だって頭の中で感じた。
周囲からの悪意に耳を塞ぎたくなる事など、いくらでもあった。
...........それでも。
[太字]何度蔑まれようと、嗤われようと、それでもお母さんは僕を『愛した』。[/太字]
〝 誰に何と言われても、自分の『好き』は曲げないでいいの。諦めたりしなくてもいいの。 〟
〝 無理して『皆みたいに』なろうとなんてしなくてもいいの。 〟
.........なんで?
〝 ........柊翔はね、たくさんの事が『好き』になれるんだから 〟
〝 それはとっても、良い事だから。 〟
〝 だから柊翔。柊翔はね、柊翔のやりたいようにやりなさい。 〟
..........
「..........うん、分かった」
そうは言ったけど。
[太字]『やりたいように』。
それが、僕にはどうも分からなかった。[/太字]
『好き』を仕事に、とかその辺の広告はほざくけど。
僕にとっての『好き』は『好き』でしかなくて。
[太字]皆みたいになっちゃいけないの?って。
自分は『好き』って理由だけで生きていかなきゃいけないの?って。[/太字]
[太字]..........いつまでも分からなかった。[/太字]
どうすればいいの?って。
僕はどうやって生きればいいの?って。
[太字]ある時にゴミ箱の中でビリビリに破り捨てられた賞状を見た。[/太字]
自由研究の賞状だった。
..........兄さんが破り捨てたのかなって、何で破り捨てたんだろうなって他人事に感傷した。
[太字]好きな勉強に熱中してるからって、そんなものいらないって。[/太字]
[太字]..........じゃあ、夢と好きがイコールの赤い糸で繋げられているって[漢字]周り[/漢字][ふりがな]みんな[/ふりがな]は言うの?[/太字]
ねぇ、誰か、教えてよ。
誰でも良いから教えてよ。
知りたいよ。
[太字]..........僕、お手本ないと分からないよ?[/太字]
[太字]何も分かんないと僕、もう誰かさんの真似でもしないと分からないよ?[/太字]
お願い、教えてよ。
どうにかなっちゃいそうだよ、怖いよ。
[太字]僕だって、皆みたいになりたいよ。なってみたいよ。[/太字]
[水平線]
______あぁ、そうか。
[小文字]柊翔「 [太字]だから 魔法になったんだ[/太字] 」[/小文字]