嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
レモン「..........何なんすか、あれ」
夕凪「[太字]...........さっき言ったこと、そのまんま全部がこれだ[/太字]」
レモン「...........っ」
何なのあれ。
[太字]本当に、化け物みたいな___[/太字]
レモン「っ、」
音もなく頬の肌が裂け、血が一滴流れる。
その一撃を投げたのは、[太字]どう見たってあの化け物で。[/太字]
その化け物と、目が合う。
[太字]たくさん他人の[漢字]躯[/漢字][ふりがな]カラダ[/ふりがな]を無理やりにちぎって、足りなくなったところがあるなら他人から奪って取り繕って。[/太字]
そんな感じで継接ぎの見た目をしたそれは、
見たことのあるようなパーツばかりを取り付けて黒く溶けかけていながらも、[太字]確かに、生命として機能している。[/太字]
不定形でぐちゃぐちゃの『それ』をあえて例えるなら、[太字]『成れ果て』であった。[/太字]
朝露「..........来たのか」
朝露「マジでごめん、せっかくの休息をこっちの都合で潰しちゃって」
レモン「........いや、それはいいんすよ、別に」
レモン「..........で、何であなたがいるんすかね、[太字]私たちの案内人だった方が[/太字]」
「...........見たことあったなと思ってましたけど、まさか記憶が正しかったなんて。」
[太字]笹淵[/太字]「[太字]______お久しぶりですね、『迷子さん』。[/太字]」
レモン「.........笑っちゃうね、馬鹿みたい。」
朝露「え、まさかの二人は顔見知り.........?」
夕凪「[太字]______っ、お前ら来るぞ![/太字]」
『 [太字]五月蝿いんだよ!!!![/太字] 』
一声で無数の槍が現れこちらへ向かう。
夕凪「______[太字]【[漢字]可逆時計[/漢字][ふりがな]かぎゃくどけい[/ふりがな]】!![/太字]」
朱肉「[太字]『[漢字]沙羅双樹[/漢字][ふりがな]しゃらそうじゅ[/ふりがな]』!![/太字]」
人間が反応できる最速で同時の詠唱。
目の前を木々の壁で覆われ、辺り一面は結界に包まれる。
結界は夕凪さんの能力由来、辺りに歪んだ時計が映っているもの。
レモン「.........じゃ、一旦自己紹介は後回しってことで」
笹淵「..........。」
それで返ってきたのは、無言の肯定だけ。
前を向き直す。
ああは言ったが、生憎私は今生肉を持っていない状態だから[太字]能力を最大限引き出すことはできない。[/太字]
私は、どうすればいい?
[太字]私は、どうすべき?[/太字]
捨て飯「...........っ、柊翔.........」
レモン「...........」
心配そうに見つめる事しかできない捨て飯さんが、彼を見つめる。
[太字]視線の先で変わり果てて映る柊翔くんの瞳が、そんな捨て飯さんの暖かい瞳に酷く似ているような気がした。[/太字]
レモン「...........」
レモン「..........あれ」
______いや、違う。
[太字]心当たりがある。見たことがある。[/太字]
捨て飯さんの瞳、佐々木さんの黒い髪。
[太字]よくよく見てみれば、少しだけは私の知っている誰かの姿に似ている。
それも酷く似ている。[/太字]
レモン「...........」
[太字]彼の[漢字]願い[/漢字][ふりがな]能力[/ふりがな]は______[/太字]
[水平線]
夕凪「.........っ、さっきからずっと、槍ばっか、飛んできやがって.......ッ!」
槍は止め処なく飛んでくる。隙がない。
『自分の記憶』から遡って拝借した[漢字]アイツ[/漢字][ふりがな]橘[/ふりがな]の大鉈でどうにか凌いでいるが、いつまで持つか。
というか、これをいっつも容易くぶん回してる橘が恐ろしい。
『 [太字]うるさいうるさいうるさい!!黙れ黙れだまれだまれ、黙れ!!!![/太字] 』
そして何より、暴走していると言っても、その相手になっているのは[太字]『捨て飯の弟』。[/太字]
[太字]何より、殺すという手段を取るわけには行かない。[/太字]
結論付ければ、ダメージを最小限にして暴走を止めないといけないわけだ。
今抱えてる大鉈は一撃一撃が重いからこそ、安々と相手には手を出せない。
だから、俺は______
夕凪「[太字]『[漢字]可逆転移[/漢字][ふりがな]リバースワールド[/ふりがな]』[/太字].......!」
夕凪「[太字]朝露ッ!![/太字]」
朝露「______八極、すなわち八方の極遠へと達する」
朝露「酔、筋、血、華、黙、怒、展、廻.......」
朝露「[太字]........『[漢字]花文[/漢字][ふりがな]はなぶみ[/ふりがな]』。[/太字]」
『 ッ、!! 』
[太字]______ "俺たち" は、俺たちだから。
だから、[漢字]いつもの[/漢字][ふりがな]ゴリ押し[/ふりがな]。[/太字]
俺は俺でできる事をするまでだし、アイツはアイツで[漢字]徒手空拳[/漢字][ふりがな]ステゴロ[/ふりがな]だし。
確実に痛いということに変わりはないが、凶器を利用するより生身での戦闘の方がダメージ量も少なくなることは明らかだろう。
だから俺の記憶から飛んでいく銃弾を『過去』から連れ出して槍を相殺する。
意外と槍も脆いもんだが、どうしてこうも知ってる奴らがこうやって情緒不安定になるんだか。
[太字]______これが運命だっていうのかよ、神様は?[/太字]
『 早く.........[太字]黙れよ!![/太字] 』
『 [太字]お前ら全員みたいな赤の他人に僕の何が分かる!!なぁ分かんないだろ!!!![/太字] 』
彼だけが喋っているはずなのに、何重にも重なって声が聞こえる。
[太字]複製されているみたいに、何人も同時に話し始めるように。[/太字]
本当の声がどこにあるのかすら分からない。
捨て飯「赤の他人って........何をほざいて、」
『 [太字]血が繋がっていても所詮は他人なんだよ[/太字] 』
捨て飯「[太字]........ッ!![/太字]」
レモン「これ以上はヤバいっす、下がってください」
捨て飯「........でも.......ッ」
レモン「でも、とかじゃない。変に刺激して悪化したらどうするんすか」
捨て飯「........でも.......!!」
捨て飯「[太字]........私は、あの子のために何もできないって言うんですか!![/太字]」
捨て飯「[太字]せっかく元通りになれたって言うのに、手放せって言うんですか!![/太字]」
捨て飯は[太字]『お兄ちゃん』[/太字]として、確かに泣いていた。
[太字]その気持ちが痛いほど、俺には分かる。[/太字]
大切な人を手放すのはこれでもかと言うほど、痛い。
[太字]しかし、現実とは、運命とは残酷だ。[/太字]
『 僕の苦しみが、痛みが、願いが.......... 』
『 [太字]______お前らなんかに分かるわけないだろ!!!![/太字] 』
『 [太字]【[漢字]無作為な模倣者[/漢字][ふりがな]ミスター・マスクドコピー[/ふりがな]】[/太字] 』
『 [太字]______『 [漢字]着せ替え人形[/漢字][ふりがな]ビスクドール[/ふりがな] 』!![/太字] 』
全てを拒絶するよう、
[太字]目の前でどす黒い感情に支配された『成れ果て』が、ぐるぐると目まぐるしく姿を変えていく。[/太字]
[水平線]
朱肉「______僕自身、だけど」
[水平線]
夕凪「.........あれはきっと捨て飯じゃない」
[水平線]
彼は奇妙なガスマスクをつけた人の姿へと変わる。
[太字]それを、見たことがある。[/太字]
[太字]朱肉の世界樹を緑炎で燃やしたのは、あの人だ。[/太字]
姿を変える彼の不思議な力。
[太字]それだけでもう、俺が最悪な真実を知るには十分すぎた。[/太字]
夕凪「..........お前だったのか、全部」
夕凪「[太字]朱肉を堕としたのも、捨て飯になりすましてたのも、全部、お前が[/太字]」