嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
今から2年前。
電車に飛び降りかけた年から数え始め、
ついに片手で指を立てるだけでは数えきることのできなくなった年の、春の事。
「.........はい、分かりました。失礼します」
そう言って、俺は今日も電話を終わりにさせた。
「...........。」
『 ......今日も、来てくれない感じですかね? 』
「.........はい。そうみたいですね」
今日も伝えられたのは[太字]登校拒否[/太字]の通達。
『 そうですか.........でも高校という新しい環境ですし、しょうがないはしょうがないですよ....... 』
「、そうですけど.........」
チャイムが鳴る10分前。
今日も机一つだけが空いてどこか寂しい、そんな教室に足を運んでいった。
[水平線]
俺は今年新入生となる1年生、そのクラス担任の一角を任されていた。
4月中旬、[漢字]HR[/漢字][ふりがな]ホームルーム[/ふりがな]5分前の教室内は騒がしい。
早速作った友達と談笑する生徒たちもいれば、馴染めていないのか大人しく席に座る生徒もいる。
『 あ、先生! おはようございます! 』
「あ、おはよう。えーっと......[太字]神々廻くん[/太字]、で合ってる?」
『 合ってます先生! 』
「あー、それは良かった........」
神々廻くん。
苗字が何か妙にかっこよくて覚えてたんだよな、ってのはここだけの秘密で。
『 あ、そうだ先生。聞きたいことあるんですけど 』
「ん、どーした? 分かんない問題あるなら見るけど」
『 あ、いや、そうじゃなくて。 』
『 [太字].........ずっと空いてるあの席、誰の席なのかなって[/太字] 』
「..........あー........」
「........そこの席は、[太字][漢字]神威[/漢字][ふりがな]かむい[/ふりがな]くん[/太字]って子の席だな。学校にはまだ、来てくれてないみたいだけど」
『 へぇ〜........いつかお話できるかな? 』
「........どうだろうな」
その子、入学式に来たきり学校に来てくれてないんだよ。なんて現実、俺には言えなかった。
[水平線]
『 夕凪先生も大変ですねぇ、不登校の子を受け持つ事になるなんて 』
転任でやってきたとある先生に開口一番そんな事を言われ、まぁまぁ腹が立ったのを未だに覚えている。
「.........どうすればいいんですかね、俺」
「こういうのがそもそも俺初めてなんで、どう接していくべきかが分かんないんすよ」
『 ........まぁ、言っちゃえば [太字]"イレギュラー"[/太字] ですもんねぇ.......まぁ実際分かりますよ、その気持ちは 』
「...........。」
『 でもこのままじゃ解決しないのも事実ですよ、夕凪先生。 』
『 [太字]だからいっそ、行きたくない原因とかその辺、聞きたければこちらから行ってみるってのも手ですよ?[/太字] 』
こちらから手を差し伸べるという方法。
[太字]それは文面だけすれば綺麗に見えるかもしれないが、その実ちょっと乱暴で、ある意味一番手っ取り早い。[/太字]
「あー.........」
でも俺はその方法を、否定することはできなかった。
「.........今度、そうしてみようかな」
[太字]..........多分このままじゃ、水平線なばかりだから。[/太字]