嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
佐々木「........というか、急にそんな事聞いてどうしたんですか?」
佐々木「何か悩み事でも......?」
レモン「いや悩み事じゃないっすよ」
若干呆れたような目つきと声色で対応される。
『本当の彼女』は実際、空元気で犬のしっぽを回すような過去とは違うのだから。
レモン「..........いや、何かね? そういうのを聞かれるような場所があるらしくて.........」
立ち上がって、一つ伸びをして、気だるげそうに彼女は続けて答える。
レモン「[太字]______まぁいわば、ただの『都市伝説』っすよ。[/太字]」
[水平線]
佐々木「.........んでその、都市伝説と言うのは......?」
レモン「はぁ、本当に佐々木ってそういう知らない事知ろうとするよねー.........」
レモン「てか知らないんすか、[太字]『 戻界駅 』[/太字]っすよ『戻界駅』。最近ネットでも話題っすよ?」
佐々木「えっそうなんですか」
何と言うか、それを知らないのが申し訳なくて思わず調べでもしようとスマホに手をかけたが、迷いの末にそれはやめた。
彼女の口からの方が、何か信頼できるような気がしたから。
レモン「まぁ佐々木はそういうのとは無縁だから知らなくてトーゼンっすよー。[小文字]いやまぁだから教えるんだけども[/小文字]」
とか言っていたら出てくる。
へらへらりと笑って手をひらひら虚空に振る彼女、その笑顔は黒いという二面性。
おふざけで言ったのは分かっているが地味に心中が痛い。
佐々木「ウッ(([小文字]図星[/小文字]」
流石にうめき声を出さざるを得ない。(笑)
佐々木「ん゛んっ、........で、話を戻しますけど.........((」
レモン「分かってるよ、笑 その『戻界駅』とやらがどんなやつかーって事でしょ?」
レモン「[太字]______教えたげる。[/太字]」
あぁ、やはり話の路線がすぐ外れるのは私たちの悪いところだ。
[水平線]
[太字]〝 [漢字]戻界駅[/漢字][ふりがな]ライカイエキ[/ふりがな] 〟 。[/太字]
[太字]それは『 煩悩 』とやらを抱えた人がその最果てでたどり着く幻の終点駅。
そういう、都市伝説。[/太字]
そう言われている。
その駅は現代じゃ珍しく伝言板が設けられている。
まぁ何ともレトロチックだななんて思うが。
そこにあるのは、書かれた[太字]煩悩の素を[漢字]解[/漢字][ふりがな]ほど[/ふりがな]くための設問。[/太字]
[太字]______その問いに、自分自身に正直にならなければ帰れない。
それがこの駅、幻の駅、『 戻界駅 』なのだ。[/太字]
[太字]______答えなければ、永遠に閉じ込められたまま。[/太字]
[水平線]
佐々木「.........なるほど?」
レモン「まぁ有名どころじゃ[太字]『きさらぎ駅』[/太字]みたいなやつっすね。」
レモン「何か戻界駅に着いたって言う報告もネットじゃ少なくはないですし、もしそれが本当だとすればかなりネタになりそうだなって」
佐々木「......つまりまぁ電車、ですか.........長らく乗ってないですね」
長らく乗った電車を降りた後の、どうも脳内が地に足をつけていないようなあの感覚。
それがどうも苦手で、私は知らぬ間無意識的で避けていたのだろう。
それに距離が距離なのだ。バス通勤で事足りてしまう。
佐々木「レモンさんは電車とか乗るんですか?」
レモン「ん?あー、まぁ乗るには乗るよ。」
レモン「まぁその大体が一人旅みたいなもんだけどね、w」
佐々木「そして都市伝説をネタにするためにも今度乗るつもり......と」
レモン「そう、そゆこと。」
レモン「私に『煩悩』があるかどうかは......まぁわかんないけどさ」
煩悩。
欲、怒り、愚痴、
慢心、疑い、邪見。
心身を苦しめては、悟りを開くのを妨げる心の働き、
[太字]仏教用語としてはそう言われたものだ。[/太字]
[太字]______私に、あるかもしれない。[/太字]
佐々木「.........。」
佐々木「あの、レモンさん。」
レモン「......なんすか?」
佐々木「[太字]______私が一緒に行くって事は、可能ですか?[/太字]」