嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
夕凪『 よく来たなぁ、オリジナル。ここは鏡の次元だ 』
いやいや、そう言われてましても。
連れ込ませたのはアンタらだろうがと、[漢字]腸[/漢字][ふりがな]はらわた[/ふりがな]が煮えくり返る。
『 ........つっても、連れ込んだの俺らなんだけどな 』
『 まぁ、ここに連れ込んだのは言うまでもない。 』
『 [太字]お前らの絶望の底に沈んだ[漢字]それ[/漢字][ふりがな]魂[/ふりがな]が欲しい、それだけ。[/太字] 』
.........。
知ってたのに、喋っているのは自分なのに、どうも恐ろしい何かにしか見えなくて固唾を呑む。
『 あとは染め上げるだけ。 』
『 [太字]身体ごと、絶望の奥の奥に、なぁ!![/太字] 』
ギリッ、と音が鳴る。
夕凪「[太字]っあ゛、!?[/太字]」
朝露「夕凪っ!?」
その歯ぎしりに近しい音が、自身の肉体の強くつままれる音だと理解する以前に、俺の腕が鏡面に沈んでいく。
[太字]とても冷たくて、温かい。[/太字]
[太字]それでいて、朝露に鏡面から引き剥がされた時よりずっと痛い。[/太字]
そんくらいに強い力で、鏡の中に引きずり込まれた。
______鏡の中は、暗くて苦しくて息ができない。
包まれているようなのに、空っぽで寂しくて仕方がない。
[太字]そんな、自ら沈んだ海の中の風景みたいだった。[/太字]
朝露「っ、.........」
朝露「..........なぁ、いるんだろ? [太字]偽物の俺[/太字]」
『 ______早く気づいてくれて嬉しいよ。こっちとしては好都合だ 』
『 [太字]...........お話しようか、俺。[/太字] 』
[水平線]
[太字][斜体]ガシャァンッ!![/斜体][/太字]
夕凪「、ったぁ........」
鏡面の割れるような音、
水面に勢いよく叩きつけられたような音が混ざったような音と共に地面に倒れ伏す。
.........俺という存在が、彼にはただの餌だとしか認識していない。
鏡の前で長引く痛みにうずくまる俺を見下すように、
夕凪『 っはは、情けねぇなぁ 』
と言って、ドッペルゲンガーの俺は笑った。
夕凪「..........っ、」
夕凪『 なぁ、お前そんなんでよく生きられるな。 』
夕凪『 [太字]ホントはただの弱虫なくせして、強がってるだけの負け犬なくせして。[/太字] 』
夕凪「.........っ、俺には、放っておいて死ねないくらい大事な奴らがいっぱいいる」
夕凪「この先未来を背負っていく、大事な奴らがな」
夕凪「[太字]だから、こんなとこで勝手に死んでらんねぇ[/太字]」
夕凪『 ......はっ 』
夕凪『 何浮かれたこと言ってんだよ 』
夕凪『 [太字]お前なんて、生きる価値は微塵もない[/太字] 』
夕凪『 分かってんだろ? 』
夕凪「.........は?」
夕凪『 [太字]目の前にいた救える存在を見捨てて殺した[/太字] 』
夕凪『 [太字]そんなやつに存在価値はあると思うか?[/太字] 』