嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
朝露「........?」
目が覚めて、初めてそこが異常であることに気づく。
ネオンライトに照らされた自分の身体と........
朝露「[太字]........えっ誰ぇ!?[/太字]」
???「ッッ........()」
目の前にいる中性的で眠たげな人が照らされながら、こちらを見ていた。
朝露「........え、誰......ですか、?」
???「...........」
ワンテンポ遅れ、その人?子供? は、スケッチブックに文字を書き始める。
『 我は[太字]〝 虚無 〟[/太字]だ 』
朝露「........虚無、?」
虚無( コクン )
目の前で〝 虚無 〟と名乗る子は頷いた。
_____不思議な名前だな。
朝露「.........ねぇ、虚無。......ここはどこなのか教えて?」
虚無「.........」
やはりワンテンポ遅れ、スケッチブックに文字を描き始める。
きっと、俺の目を見て聞いていてくれているからだ。
『 ____ここは[太字]『九龍城』[/太字] 』
『 都心の奥深くにある、暗黒の地下街 』
朝露「九龍城.........」
聞いたこともない単語だ。
二十と数年の時を生きていて、ここまで知らなかった事なんてあっただろうか。
朝露「.........ねぇ、虚無」
虚無「、......。」
話しかければ、『どうした』と言わんばかりにすぐこちらを向く。
朝露「ここについて、九龍城について、君が知っている事をもっと教えてほしい。」
虚無「.........」
スラスラ......
虚無「、......。」
『 九龍城は、ただの猿の楽園。[太字]〝 絶望 〟に狂った、猿たちの楽園。[/太字] 』
『 [太字]我の知らない顔のお前が来たという事は。[/太字] 』
『 [太字]お前も、〝 絶望 〟に狂った猿の一匹だという事の裏付けに過ぎない。[/太字] 』
『 [太字].........我も、お前も。どっちも、頭のおかしくなった猿なのだ[/太字] 』
[太字]_____頭で、分からなかったフリはできない言葉だった。[/太字]
百聞は一見にしかず、読んで字の如く。
朝露「..........」
朝露「その.........〝 絶望 〟は、この場所に関係があるの?」
虚無「.........。」
虚無「 [太字]396Hz[/太字] 」
虚無「[太字]_____心当たりは、あるのだな[/太字]」
朝露「...........え?」
え、今.........
朝露「.........喋っ、た......?」
虚無「.........。」
目の前のその人は喋った。
でも、それ以上に恐ろしかったのは。
[太字]その『声』だった。[/太字]
[太字]一つひとつに、重い鉛がずんとのしかかるような静かな威圧を、心臓に直に感じる。[/太字]
まるで。
虚無「[太字]______お前は、真実を知る覚悟があるか。[/太字]」
朝露「.......ある、」
虚無「.........」
[太字]...........まるで、自分の全てを水泡に帰してしまいそうなほど、脆く優しいのに、痛い。[/太字]
そして喋ったと衝撃への余韻に浸ったと思うと、
スケッチブックのページをまた捲って書き出した。
『 [太字]この街にはドッペルゲンガーが存在する[/太字] 』
『 [太字]ドッペルゲンガーはお前たちの〝 絶望 〟から生まれた、〝 絶望 〟を食べるためだけに生まれた存在[/太字] 』
『 [太字]〝 絶望 〟もドッペルゲンガーも、放っておけば、お前の命はない[/太字] 』
パタリ、とスケッチブックを閉じて、こちらに真っ直ぐにアメジストの瞳が問う。
虚無「[太字]______お前は、何に〝 絶望 〟している[/太字]」
虚無「[太字]どうして〝 絶望 〟している[/太字]」
その言葉を聞いて。
[太字]........急に、どうでもいいような、いろんな思い出が走馬灯のように動き出した。[/太字]
思い出写真
ふたり
お墓の前
お昼休憩
俺が右
お前が左
お前今は何
俺の何
.......無い
虚無「[太字]______【 話せ 】[/太字]」
______あぁそうか、なるほど。
朝露「.......ッ、俺、.....は、」
[太字]コイツ、言霊遣いだったのか。[/太字]
道理で、この声が聞きたくないわけだ。
スケッチブックでしか会話しないわけだ。
...........もう、いいか。
[太字]これ以上、抵抗する手段もないんだから。[/太字]