嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
夕凪「........ぁ、え......?」
朝露「...........」
真っ暗闇な影の液と血溜まりが混じり、地獄のような湖を作り出している。
[太字]『影だったもの』が反逆したみたいに、自らの血で溺れていく。[/太字]
夕凪「.........ッッ、!」
朝露「........あ、おい......?」
怖くて、奥に続く道を無我夢中に走っていった。
後ろで何の動揺もしていない不気味な友達を置いて。
[水平線]
夕凪「........ッ、はぁ、はぁ、っ......!」
朝露「......おい、何急に走ってんだよ〜!」
夕凪「っえ、あ、........」
朝露「..........いや、分かるよ」
朝露「あんなヤバい光景見たら、誰だって逃げたくなるって」
朝露「........怖かったよな」
夕凪「........」
夕凪「......何だよ急に」
目の前の彼に包まれる。
ふと、思考する。
もし、あれが二人から溢れていった絶望だとするなら。
寄り添ってなきゃ、[太字]きっと死んでた。[/太字]
影から出ていったあれが、ドッペルゲンガー。
絶望と同じように、いつもどこかで俺たちを見てる。
朝露「........夕凪は、心当たりがあるんだよね?」
心当たり........
夕凪「........」
夕凪「........うん」
朝露「......じゃあ、鏡の次元、行きたいって思ってる?」
夕凪「........」
行けば、『自分』と向き合うことになるだろう。
[太字]_____二つの意味で。[/太字]
夕凪「[太字]YESと言ったら実際嘘になる。怖くないと言っても嘘になる。......生半可な覚悟だけはあるかな[/太字]」
夕凪「自分の信念が行こうって言ってるけど、いっそ殺されてみてもいいなんて思ってたりする。」
夕凪「[太字]自分の想いに殺されるのも悪くないかなってさぁ。[/太字]」
夕凪「ぐっちゃぐちゃな俺の正義だけはあるよ」
朝露「........夕凪って、そんな自分に命に対して無頓着だったっけ?」
夕凪「......特別死にたいわけでもねーよ、バーカ」
目が合わせられない。
右に目を逸らせば、グラフィティアートが目に映る。
俯いたら、ネオン管の看板に照らされた朝露の足元が映る。
[太字]______じゃあなんで、影がないんだ?
足元から此方側に、影が伸びない?[/太字]
朝露「.........そっか」
[太字]彼の影、そのものがこの場にない。
じゃあお前は誰なんだ?[/太字]
朝露「[太字]その生半可な正義をぶち壊さねぇとな。[/太字]」
夕凪「っ、はぁ.......!」
夕凪「[太字]お前やっぱドッペルゲンガーじゃねぇか!![/太字]」
朝露じゃない。
ただそう気づくのすら遅かったようで。
不敵なおぞましい、首元まで裂けていきそうな笑みを浮かべた朝露は言った。
譛晞愆「[太字]______連れて行ってやるよ。[/太字]」
譛晞愆「[太字]一周回って[漢字]天国[/漢字][ふりがな]じごく[/ふりがな]みたいな場所にな[/太字]」
目の前にいる彼は、もう俺の知らない隱ー縺�。
抵抗の術もない。
伸びた爪の両手が首元に食い込んで、俺は堕ちていった。