嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
夕凪「........は?」
夕凪「おい、一体どういう......!」
溺水「まぁまぁ〜。怒って盲目的になるのは危ないよぉ〜?」
夕凪「........」
溺水「......話を戻すねぇ。」
溺水「さっきも言った通り、[太字]そのままだと君は直に死ぬ。[/太字]」
夕凪「........それは、どうしてだ?」
夕凪「[太字]この街に秩序が存在しないからか?[/太字]」
溺水「.........」
...........何となく分かっていた。
[太字]この街ほど、『無法地帯』と呼ぶに相応しい居場所はないと。[/太字]
彼がさっき俺に渡そうとした紙袋の中身すら、きっとろくなもんじゃない。
[小文字]溺水「[太字]..........ドッペルゲンガー[/太字]」[/小文字]
夕凪「え?」
溺水「[太字]ドッペルゲンガーがいると言われたら、君は信じるかい?[/太字]」
夕凪「..........ドッペル、ゲンガー......?」
溺水「うん、そうだよぉ。」
溺水「[太字]実際この街が狂ってるのは、半分くらいドッペルゲンガーのせいだしねぇ。[/太字]」
[水平線]
溺水「ここだとねぇ、ドッペルゲンガーがよく出るんだよ〜。」
溺水「ドッペルゲンガーは〜、言わば『オリジナル』の[太字]〝 絶望 〟[/太字]に反応して生まれる存在。」
溺水「[太字]ドッペルゲンガーは良くも悪くも〝 絶望 〟を食べてくれる。[/太字]」
溺水「[太字]でもねぇ〜、〝 絶望 〟を放ったらかしてると、熟れた魂ごと食べられて身体を乗っ取られちゃうんだぁ〜![/太字]」
夕凪「.........っ」
文面だけ見ると、にわかにも信じがたい話だ。
[太字]........それでも、この話を嘘と思えなかった。[/太字]
[水平線]
「[太字]______僕自身、だけど[/太字]」
[水平線]
夕凪「っ、......」
溺水「[太字]君は〝 絶望 〟してる。[/太字]何かに対して、少なくとも〝 絶望 〟してる」
溺水「ここに迷子になってきた人たちはみ〜んなそうだったよ〜。」
夕凪「.........じゃあ、このまま黙って死ねと......?」
夕凪「ドッペルゲンガーに、食われろと.........?」
溺水「えへへ........そんなわけないじゃぁん。」
待ってました、と言わんばかりに。
彼は笑うばかりだった目元を開き、瞳孔の渦巻いた瞳をこちらに真っ直ぐ向けた。
溺水「[太字]_____『鏡の次元』[/太字]」
溺水「[太字]『鏡の次元』に行って、自分とお話してあげなよ。[/太字]」
溺水「って言っても〜、行き方は知らないから、僕が言えるのはこれ以上な〜んにもないけどねぇ。」
夕凪「........。」
溺水「で、聞きたいのはこれでおしまい?」
...........ひとつだけ。
夕凪「[太字]..........溺水さんは、〝 絶望 〟してたんですか?[/太字]」
溺水「........」
つまりは、だ。
ここは〝 絶望 〟する者だけが入れる、変な街。
[太字]それなら彼まで〝 絶望 〟してなきゃ、ここにいるのはおかしいだろう?[/太字]
彼の笑顔が歪む。
まぁ、図星だろう。
_____その時、感情に彼の中の何かが反応でもしたのだろうか。
[太字]影がブクブクと音を立てて、泡を吹いて、何かを孕んだように大きく膨れていく。[/太字]
影を見て、彼は苦しそうな笑顔で言う。
溺水「.........僕は言ったはずなんだけどなぁ、......」
溺水「[太字].........堅苦しいのは好きじゃないんだってばぁ。[/太字]」
瞬間、怒り狂うように、はち切れるように影が割れる。
べちゃりと、何も映さないほどに真っ暗の液体が二人の足元に飛び散る。
影の色がすっかりと落ちていき、目の前に、
あぐらをかいて座る男と相違のないヒトが、顕現する。
そのまま、
溺水「.......んじゃ。」
溺水「[太字]頑張ってねぇ〜、![/太字]」
ぐちゃり。
[太字]笑顔で、どろどろになった。[/太字]