嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
夕凪「.........!」
目が覚めたその時、一番に感じたのは水色の光。
薄暗くされている自分の身体に、妖しく光が纏っている。
夕凪「.........朝露!?」
朝露「ん、......夕凪、俺ら........」
夕凪「......よく分かんねー」
[小文字]夕凪「何だったんだ、あれ」[/小文字]
あの感覚が頭にこびりついて離れない。
思い出そうとするだけで背中が一瞬で凍りつく。
朝露「........夕凪」
朝露「俺ら、変なとこ来ちゃったみたいだな」
光の方を見ると、眩むくらいに目に悪い色使いのネオン管で文字が描かれている。
『 WELCOME 』
[小文字]夕凪「[太字].........何がwelcomeだよ、クソ野郎[/太字]」[/小文字]
夕凪「.......って、ちょっおいお前!一人で勝手に行くんじゃねー!」
朝露の貼りついた笑顔、
連れ去られていてなお歓迎する姿勢、
無性に腹が立った。
[水平線]
足を踏み入れる。
路面は意外に整備されているみたいで、まぁ転んだらそれは痛そうだ。
『 ........あれぇ〜、お兄ちゃんたち初めて見る顔だねぇ〜。どしたのぉ〜 』
夕凪「!?」
突然、声をかけられた。
人なんていたのか? 気づかなかった。
[太字]『 そ〜んな驚かなくてもいいのにぃ〜 』
『 仲良くしようよぉ〜、ねぇ? 』[/太字]
声のする方には、一人の男がブルーシートの上で[漢字]胡座[/漢字][ふりがな]あぐら[/ふりがな]をかいてこちらに微笑んでいる。
背丈はかなり低そうだ。
夕凪「........誰なんだ、あんたは」
『 え〜あ〜僕? う〜んとねぇ、じゃあ [太字]"[漢字]溺水[/漢字][ふりがな]デキスイ[/ふりがな]"[/太字] って呼んで! 』
夕凪「で、溺水......?」
夕凪「で.........その、溺水.....さんは、こんな路上で何してるんですか」
溺水「何って........見て分からない? 僕はここで[太字]『商売』[/太字]してるんだよぉ〜」
溺水「君もいる〜?」
そうやって笑顔で紙袋を上に、俺の手元まで突き出してくる。
夕凪「........いや、いいです.......」
.........不気味だ。
さっきからこの男が何を考えてるかなんて皆目検討もつかないし、
[太字]笑ってばかりだった目が開いた時に見えた瞳が、嘘みたいに黒かったから。[/太字]
夕凪「.........」
夕凪「.........溺水、さん」
溺水「........堅苦しいのは好きじゃないんだぁ、溺水でいいよ」
夕凪「.........じゃあ、溺水くん。」
夕凪「ここについて、何か知ってることはないかな?」
溺水「ここについて? あぁ〜、つまりは君は[太字]迷子になった[/太字]って事なのかぁ〜!」
溺水「いいよぉ、教えてあげる!」
溺水「ここはねぇ、暗黒の地下街[太字]『[漢字]九龍城[/漢字][ふりがな]クロウジョウ[/ふりがな]』[/太字]!」
溺水「夜の明けることのない、都心深くの暗黒地下街!」
溺水「毎日が宴会で毎日が楽しい、そんな場所!」
夕凪「.........えっと、その......ここから出る方法とか、あるのか?」
溺水「んえ、出る方法? 僕は知らないよ〜!」
溺水「[太字]だってみ〜んな、出ようとか考えもしないんだから![/太字]」
夕凪「.......え?」
溺水「僕もそうだも〜ん! み〜んなここに居れば幸せなんだよ!」
溺水「[太字]だから、ね? 君も一緒に遊ぼうよぉ〜![/太字]」
.........ダメだ。
気が狂いそうになる。
夕凪「.........俺はいい」
溺水「.........そっかぁ。」
溺水「........。」
溺水「.........道理で迷子が来たわけだぁ。」
夕凪「..........迷子.....? 俺の事ですか?」
溺水「うん、教えてあげる。」
溺水「[太字]君、そのままだと死ぬよ。[/太字]」