嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
朝露「........ほい、半分こ」
夕凪「ありがと。これお前の分な」
朝露「ん、あんがと〜」
お互い1本ずつ交換し合い、手元には2色の冷えたアイスがある。
どっちから食べようか。
朝露「そう言えばだけどさぁ、ピパコの蓋の部分のアイス食わないやつっていないよね」
朝露は突拍子もなくそんな事を言い出す。
相変わらずだ。
夕凪「あー.......確かにな」
って言って、俺も蓋についたはぐれアイスを吸い取る。
吸い取らないやつなんて、大富豪か何かでもないといないだろーよ。
夕凪「うわレモン味すっぱ」
何か、すっパ◯チュウの味がする。俺の感性だけど。
朝露「えマジ?俺もうホワイトサワーの方開けちゃった......」
そっち先に食べたかったなぁ........と言わんばかりにホワイトサワーのアイスを食べ始めた。
夕凪「レモン味は逃げねぇんだからゆっくり食えっての.......まぁアイスは溶けるけどな」
朝露「じゃあ早く食べなきゃじゃん!!(((」
やっぱ昔から変わらずテンションバグってんな、コイツ
夕凪「.........そーだな」
朝露「おい他人事......(((」
[水平線]
夕凪「.........朝露って......夏、好きか?」
朝露「........夏?」
朝露「[太字]...........嫌いかなぁ[/太字]」
朝露「直射日光眩しいし、暑いし」
夕凪「そうか.......」
朝露「........何、突然聞いちゃって」
夕凪「..........夏って、お前と夏祭りとか行ったことなかったなー、なんて。」
夕凪「今くらいの時期やってるのかな」
朝露「あー.........何か今度駅前でイベントやるって言ってたっけ........」
夕凪「あ、本当?」
ピパコをちゅうちゅう吸いながらスマホをいじっている朝露。
朝露「あ、大道芸..........今日から始まってるんだな」
夕凪「へぇ、大道芸........」
道理で人の量がいつもより多いわけだ。
人の流れをぼうっと眺める。
夕凪「.......?」
一人。
人の流れに逆らって路地裏に吸い込まれる人を見た。
まぁそんなもんかと思ってはいたが、なぜか目が離せない。
朝露「夕凪どした」
夕凪「え、あぁ、いや......」
夕凪「[太字]......あの路地裏って、何かあったっけ?[/太字]」
朝露「......路地裏?」
夕凪「ほら、そこの人ひとりは入れそうな隙間のとこ」
朝露「........俺は知らないなぁ」
朝露「気になるなら行ってみる?」
夕凪「え........まぁ、いいけど」
警戒心なんてもんを知らず、俺より何cmも高い背丈で路地裏に進む。
それについて行ってる俺も俺ではあるが。
夕凪「ちょっと暗くてよくわかんないな......」
夕凪「......朝露、お前は?見える?」
朝露「[太字].........見えない[/太字]」
夕凪「[太字]........え、見えない?[/太字]」
[太字]........おかしい。[/太字]
太陽は俺らの背中にいるはずで。
[太字]逆光で二人分の影が伸びて写るはずなのに、それすらもないほどに暗闇。[/太字]
俺より幾分も目は良くなっているはずの朝露でも見えないっていうのは、だいぶおかしい。
夕凪「...........」
夕凪「[太字]......え?[/太字]」
束の間。
[太字][明朝体]_____その沈む心に応え、汝を招待する。[/明朝体][/太字]
[太字]五臓六腑を全部掴まされているような一瞬の苦しみに耐えきれず、視界が黒くなった。[/太字]