嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
[中央寄せ]〜 ???side 〜[/中央寄せ]
「.........ねぇ、[太字]佐々木[/太字]?」
「、なんですか、[太字]レモンさん?[/太字]」
「突然の話で申し訳ないんすけども。」
「、はい。」
レモン「[太字]............優しさ、って、本物の優しさって、存在するんすかね?[/太字]」
「.........え?」
レモン「.........いやほら、やらない善よりやる偽善、って言うじゃないすか。」
............確かにそうだ。
レモン「.........でもそれは、本当に助けてほしい人には全然届かない。深海の光みたいに。」
レモン「............本物の優しさはどこにもないのかなって、どうしてもなるんすよ。」
彼女の深海色の瞳の光が、淋しげに揺れた。
「............」
他人のことを思う人ほど苦しい思いをするばかりの世界において、
確かに『本物の』優しさの存在証明は、できないかもしれない。
「............変わりましたね、レモンさん」
レモン「......そう?」
少し間を置いて、彼女は話す。
レモン「[太字].........私は何も変われてないよ。[/太字]」
テンションはいつもと同じはずなのに、どこか諦めたような声。
「............変わってない、の間違いではなく?」
レモン「そ、[太字]変われてない、なの。[/太字]」
レモン「謝罪して許されるようなことじゃないから、私変われてないんだよ。」
「.........まぁ、そういう人間ってことですよ。レモンさんは。」
レモン「.........それ、貶してる?」
「.........さぁ、どうでしょう?」
前にも交わしたような会話を重ねる。
既視感のある会話に、彼女もまた笑っているようだった。
「.........生き汚くて外道でも、それでいてあなたは人の事想えるくらい情に厚くて。」
「.........それでまぁ、よく罪悪に潰されないなぁとは思いますよ。」
少し[漢字]冗句[/漢字][ふりがな]ジョーク[/ふりがな]を挟みながら揺れる窓の音を眺める。
桜の紙吹雪が外を蹂躙していて、その世界に寒色はとてもじゃないが似合わない。
「[太字]............でも貴方は変わった。何が変わったかは分からないけれど、それでも、確かに変わってる。[/太字]」
桜を眺めていながらでも、それだけは言えることだった。
「考え方でも死生観とかでもなくて、こう.........[太字]心そのものが変わったような気がするんですよ、私は。[/太字]」
レモン「............心?」
彼女の暗がりな瞳もまた桜を映している。
瞳の反射越し、白っぽく映る桜は信じるものを見つけた彼女の心の光のようだった。
「自分では分かっていなくても、本質的な何かが変わってると思うんですよ。」
「きっと、貴方も、私も。周りのみんなだってそれは一緒なんだと思います。」
レモン「.........心、か」
レモン「人間は心で救われる、とか.........どうだろ、今頭に浮かんだんだけど。どう思うよ佐々木は」
嘲笑。
言葉にした彼女自身に対してなのか、試されている私に対してなのか。
それを考えるまでもなく、私の答えは決まっている。
「[太字]...............救われると思いますよ。[/太字]」
開きかけた彼女の言葉を遮り、続けて貴方に向ける。
佐々木「[太字]仮にそれが偽善だったとしても、そう言えます。[/太字]」
[太字]例えそれがニセモノでも、思い込みだけでも救われるなら、
私はそれでいい、と。[/太字]