嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
ガヤガヤと賑わう商店街。
いや、『商店街』と呼んでいいのだろうか。
[太字]無法地帯の猿の楽園と化した、このネオン街。
______乱反射されたみたいな、静かな喧騒のこの街で。[/太字]
[水平線]
あの日。絶望を知った、『あの日』。
あの地で僕は、[太字]『僕』に出会った。[/太字]
_____。
『 ........... 』
夏目「........なんで、」
『 え、僕......!? って......あぁそっか、キミは[太字]オリジナル[/太字]か。 』
夏目「オリジナル、って.......どういう事......?」
『 [太字]僕はキミのドッペルゲンガー。[/太字] 』
『 [太字]正真正銘、夏目シロウの、ドッペルゲンガーだよ。[/太字] 』
夏目「.........なんで、君は生まれたの?」
夏目「僕の真似なんてして、楽しいの?」
『 うん、楽しいよ。 』
『 [太字]存在すらも許されないよりマシでしょ?[/太字] 』
夏目「............っ」
夏目「.........それだけ......?」
『 ううん、僕の......いや、[太字]"僕ら" って言うべきかな[/太字] 』
『 僕らの目的は、.........端的に言っちゃえば、[太字]オリジナルを殺すことだよ[/太字] 』
夏目「........っ!?」
『 まだ殺すわけじゃないよ。 』
『 キミの[漢字]膿[/漢字][ふりがな]生[/ふりがな]んだ[太字]〝 邨カ譛� 〟[/太字]を解けば、........僕はキミを殺したりなんてしない。 』
『 [太字]それまでにキミが解けるかだけど、ね。[/太字] 』
夏目「..........」
『 じゃあ、僕はこの辺で。んじゃまたね〜 』
[小文字]夏目「.........次会う機会があったら、だけど」[/小文字]
その日知った僕自身の〝 邨カ譛� 〟の理由は、見るまでもなかった。
[太字]母親に存在を否定されたこと。[/太字]
もしこれが字に書かれて本になったとしても、誰もがすぐに分かる事だった。
[太字]全部否定されて、何もかも否定されて..........
『 普通 』でいて、それで全部ダメだって言われて...........[/太字]
この振る舞いも、
この口癖も、
『自分』を描くようになったのも.........
[太字]全部ぜんぶ、自分を『 異常 』に見せるため。
『 普通 』の僕を愛してくれないなら、『 異常 』になるまで。[/太字]
[太字]僕を見てくれないなら、生まれ変わった『 僕じゃない何か 』に、化けるまで。[/太字]
見てくれるまで。
僕は、いつまで化けの皮を被ればいいのだろうか。
[水平線]
夏目「............」
珍しく外の世界に明るい日差しが差し込む。
まるで、神がこちらに手を伸ばすように。
そうだとしたら珍しいもんだ。
夏目「.........お天気雨、か」
晴れているのに雨は降っていた。
その実、降っている雨が紫陽花に溶けている。
街行く人々も、晴れているのに傘を差している。
『雨が降っている』と考えるには、十分すぎる証拠。
僕は思っている。
お天気雨は、笑いながら泣く人の顔みたいだと。
見る度見る度、そう思っている。
...........そうだ、絵でも描こう。
笑いながら泣く人の絵を。
そうじゃなきゃ、僕は..........
[太字]______〝 夏目 シロウ 〟じゃないんだから。[/太字]