嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
ガラガラガラ......と音を立て、埃一つついていない、雨で冷たくなった部屋の扉が開く。
そこに入った二人の人間が、大事そうに保管された無機質なコレクションを眺めている。
壁には画家から買い取ったものなのか、誰かが描いたのか、絵画がところどころに飾られているが、目にもつけられない。
「.........[太字]アーティファクト[/太字]、」
「.......あぁ、興味があったんですね。[太字]伽藍堂さん[/太字]」
伽藍堂「...........」
無口を貫き通すばかりの彼、そのどこか暗い新緑の瞳の先は、どこまでも深い深淵の色。
その姿は、[太字]片魚 来世[/太字]であった。
片魚「本当に素晴らしいものですよねぇ。」
片魚「[太字]幾億年という多大な時間の中で過去の文明たちはこんなに素晴らしいものを作り上げているんですから。[/太字]」
伽藍堂「...........不気味」
片魚「......確かにそうとも見て取れますね。でもいつかこのアーティファクトも、[太字]『コア』の糧になりますから。[/太字]」
伽藍堂「.........消えちゃう?」
片魚「.........まぁ、そうなりますね。」
片魚「そうですよね、[太字]リリエルさん。[/太字]」
"全部分かってるぞ" と言わんばかりに彼が唱えると、
[太字]ショーケースの角からシュウシュウと音を立て、黒い煙が浮き出る。[/太字]
その黒い煙はカタチを成していき、瞬く間に氷柱のような長く白い髪の人間がそこに実像を現す。
リリエル「そ〜だねぇ。アーティファクトは『コア』に吸収されて跡形もなくなっちゃうよ〜。」
リリエル「って言っても、一応『例外』が確認されてるから一概に全部消えるとは言い切れないんだけどね」
リリエル「必要なものの内例外である『罪の根源の器』と『功の根源の器』を除くと、だから___ 」
[太字]『 豊穣の角笛 』
『 霜の人形の右手 』
『 天火忠貞の首輪 』
『 原始の金床 』
『 甦りの青薔薇 』[/太字]
リリエル「_____可能性あるのは、この5つになるかなぁ。」
リリエル「まぁ僕たちには消えても消えなくても、どっちでもいいんだけどね〜」
片魚「それはそうですね」
片魚「にしても、そのうち一つがすぐ近くにあって良かったですよね」
リリエル「そうだねぇ、まさか僕の[太字]『[漢字]居場所[/漢字][ふりがな]すみか[/ふりがな]』[/太字]にあったなんて、思いもしなかったよ〜。」
伽藍堂「.........地下の」
リリエル「あぁ、それそれ! 僕と、[太字]夏目くんが住んでたとこ![/太字]」
片魚「.........あそこは確か、随分と無法地帯なはずでは?」
片魚「そもそもスラム街と呼ばれていますし、[太字]犯罪が蔓延っていると噂を耳に挟んでいますが[/太字]」
リリエル「あ〜、それに関しては[太字]事実だよ。[/太字]まぁ、だけど........」
伽藍堂「.........だけど?」
リリエル「僕はねぇ、[太字][漢字]こっち[/漢字][ふりがな]地上[/ふりがな]よりあっちの方が好きだよ。[/太字]」
リリエル「[太字]僕にとっては天国みたいだったなぁ。[/太字]」
______だって、人の隠された本性、欲望、絶望とかって、
それを自暴自棄になってさらけ出す人間って.........
[太字]〝 最高に滑稽で醜くて、美しいと思わないかい? 〟[/太字]
そう語るマゼンタの瞳とその顔は、明らか狂っていた。