嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
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※この先閲覧注意要素を含みます。
苦手な方はお帰りください。
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朱肉「............それって、どういう......」
頭の痛さに必死に耐えながら、振り絞ったような微かな声で彼女に訊いた。
いろは「........そのまんま。......ただ私の想い、朱肉くんに伝えたかっただけだから」
いろは「.........ごめんね、こんな事言っちゃって」
朱肉「............」
朱肉「急に、そんな事、言われても.........」
[小文字]朱肉「[太字]わかんないよ.........[/太字]」[/小文字]
恋をされていた。
そう知ったら、誰もが顔を赤くするんだろう。
誰もが、身体を火照らせるんだろう。
でも、僕は.........
[太字]_____皆の前で、僕は "平気なフリ" をしなきゃ。[/太字]
こんなことで迷惑かけてらんない。
そう自分に言い聞かせて嫌なことから逃げるように目を逸らした。
朱肉「......考えて、みる......かな。」
朱肉「やっぱり、頭の整理追いつかないって言うか」
そう笑顔で言うけど。
嫌なことと嘘への息苦しさを覚えて胸を抑える。
いつしか付けなくなったリボンの代わりにならないネクタイをぎゅっと握った。
おかしい。
[太字]こんなはずないのに。[/太字]
苦しくなんてないのに。
唯気が動転して、異様な動悸と冷や汗が『私』を染めて、
[太字]心臓を取り出しては掻きむしりたくなるようなほど苦しくて。[/太字]
[小文字]朱肉「は、ぁ........あはは」[/小文字]
くるしい、くるしいよ。
[太字]何でこんなに苦しいの?[/太字]
乾いた笑いだけを[漢字]零[/漢字][ふりがな]こぼ[/ふりがな]す口を開いた瞬間に、
[太字]途端に何かが込み上げてきて咄嗟に口元をつぐんで押さえる。[/太字]
何だろう、これ。何だこれ。
さっきから僕はおかしい。
目がぐるぐるする。くるしい。気持ち悪い。
[太字].........片頭痛って、こんなに酷かったっけ。[/太字]
朱肉「っ.........!!」
幸いトイレの存在は一階にもあり、冷静に考える判断なんてものなどなく男子トイレに駆け込んだ。
いろは「ちょ、朱肉くん!?」
朱肉「.........ッは、っ......」
ぐらぐらと揺れる視界の中で朦朧と足を赤子のようよたつかせ、ぐちゃぐちゃで何もかもがわからないままで。
[小文字]朱肉「ひゅ、は、........ッぅあ、え゛」[/小文字]
[太字]ぐちゃり、と地面に吐物が叩きつけられた。
中途半端に胃液に溶かされてそれはそれはグロテスクな様相をした弁当の中身と、半分溶けてぐしゃぐしゃの錠剤。
まるで社会からする僕の異常さを雄弁に物語っているようで、ただただ気持ち悪くて、目眩がして。[/太字]
感覚から逃げ出したいなんて浅い思考で浅い呼吸を繰り返せば、[太字]再び込み上げてくる何かを抑えきれずに口から溢れる。[/太字]
そしてただ温かくて汚いそれを眺めるばかり。
何回もがいても水面が見つからない。
[太字]見つけたと思って掴んでもそれは全て[漢字]水泡[/漢字][ふりがな]すいほう[/ふりがな]。[/太字]
ただ荒い呼吸を繰り返して、水だけが吸い込まれていって、肺が蝕まれていく。
[太字]僕を助ける特効薬は、どこにあるんですか。[/太字]
誰か、なんて手を伸ばしても、その先には誰もいなくて、足音は遠ざかるばかりだから自分の手を掴んだ。
[小文字]朱肉「[太字]............あはは[/太字]」[/小文字]
馬鹿だ。馬鹿みたいだ。
[太字][漢字]他人[/漢字][ふりがな]自分[/ふりがな]を[漢字]騙して[/漢字][ふりがな]偽って[/ふりがな]生きてたら、自分まで分かんなくなっちゃった。[/太字]
朱肉「.........たすけて、」
なんてぽつりと自分の口から言えたのに、誰もそこに来てくれやしない。
音もなく睫毛を濡らす涙と、脳を直接揺さぶるような酷い頭痛を止めたくて、ただ必死に僕は唇を噛み締めた。