嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
空っぽのホームに音楽が流れる。
誰からも忘れ去られた、オルゴールのような音。
佐々木「............」
私たちの後ろで電車が止まる。
私たちの乗った電車とは真反対の青色。
ディストピアの世界の中の青空のようなそんな色。
レモン「.........帰りたいんじゃないんですか?」
彼女は駅名標の方から此方を眺めていた青年に問いかける。
案内人役「.........」
案内人役「.........こんな状態で、ですか?」
佐々木「.........ちょっと待って、これは......?」
見ると、彼の身体が少しずつ透けている。
背景と同化していくように、あるいは存在そのものが消されていくように。
レモン「ちょ、それ早く電車乗って帰った方がいいんじゃないすか!?てか早く乗って!!」
案内人役「あ、は、はい!?」
どこか渋々と言った感じで、私たちの『案内人役』はレモンさんに半ば無理やり押されたと言った感じで電車に乗せられる。
案内人役「.........何か、ありがとうございました。」
佐々木「いや、お礼を言わないといけないのはこっちの方ですよ。こちらこそありがとうございました。」
案内人役「[太字].........お二人も次の迷子の『案内人役』、頑張ってください。[/太字]」
あぁそうか。
次は『案内人役』をやらないといけないのか。
右上を向くと、ふと電光掲示板に文字が灯し出される。
戻界駅に電車が参ります、と。
気づけば彼の乗った青色の電車は、全身見えなくなっていた。
風が、電車の輪郭と記憶だけを残して。
[太字]______人間は心で救われるって、本当だったな。[/太字]
[水平線]
[中央寄せ]〜 レモンside 〜[/中央寄せ]
レモン「案内人役、か.........」
こんな私なんかにできるのだろうかと思う。
周囲とはかけ離れてひね狂ったこんな私に。
そんな事を思っても、無情にも私たちの目の前にやってくる。
キー!!と激しく電車が黒板を引きずる金切り声が鳴り、ゆっくりと電車は止まる。
私たちと同じ赤い電車だ。
現世に早く帰りたいものは帰りたい。
それでも知的好奇心に麻痺されてこの世界が楽しく感じつつもある。
あー、私ってこんなにおかしかったんだ!
開いたドアの先で、私たちは『迷子』を出迎えた。
後ろで私たちの"問い"がかき消されて変わっている事など、誰が気づくこともなく。
私にとって佐々木の存在は私を引き寄せて縛るもの。
心を奪うような、拐っていくような、[漢字]その魔法[/漢字][ふりがな]アナタ[/ふりがな]が、私には苦しいんだ。
[太字]______〝 貴方の人生最大の後悔を答えよ 〟[/太字]