嘘つきたちの輪舞曲【Lier's world】
[太字]自分の「キャラクター」という枠に囚われて、思った通りに発言も行動も取れなくなっていったのはいつからだろう。[/太字]
[太字]『 こうであれ 』[/太字]
[太字]そんな私たちの[漢字]勝手気ままな印象[/漢字][ふりがな]レッテル[/ふりがな]に誰かが、自分が、自分の考えですら狭くなったのはいつからだろう。[/太字]
............その明確な区別はつかない。
[太字]だからこそ、誰も彼女や私の変化に気づかない。[/太字]
............彼女の変化に気づけたのは、私だけなのだろうか。
[太字]それとも、[漢字]周りの環境[/漢字][ふりがな]優しいヒト[/ふりがな]が口出ししないだけ?[/太字]
レモン「...............佐々木。」
佐々木「.........何ですか」
レモン「[太字].........昔の佐々木は、どこに行ったの[/太字]」
彼女の声は、前も聞いたように低いものだった。
[太字]あの日素性を見せた、狂気から発せられていた怒りの声とは程遠く、そして低く。
それは狂気のない、純真無垢な怒りであった。[/太字]
[水平線]
[中央寄せ]〜 レモンside 〜[/中央寄せ]
「[太字].........昔の佐々木は、どこに行ったの[/太字]」
[太字]............どうしても、これに耐えられなかった。[/太字]
どこかで吐き出してしまいそうになったから。
[太字]............それならいっそ、ここで吐いてしまった方が楽だと。[/太字]
拗らせた恋愛漫画の展開は、どうあがいても複雑なものになるのを知っているから。
[太字]変わってしまった自分を一番に否定するのは他の誰でもなくて『自分』だって、[漢字]両者[/漢字][ふりがな]どっちも[/ふりがな]知っているんだから。[/太字]
佐々木「.........それは、どういう意味ですか?」
目の前、恋愛漫画とは接点すらもないような彼は淡々としている。
レモン「.........そのままだよ。自分で考えてみて」
佐々木「...............。」
佐々木はこういうのに対して真面目に考えるやつだったっけね。
変なの。
佐々木「...........そういうレモンさんは」
と、流れが変わる。
佐々木「そういうレモンさんは............[太字]そんな事言える資格があると思って言っているんですか?[/太字]」
レモン「......は?」
.........は?
ゆりかごから墓場まで、その感情しかそこに無い。
現実と幻想の狭間の世界、その断層がまた一層と抉れていった。
[水平線]
[中央寄せ]〜 佐々木side 〜[/中央寄せ]
心を置き去りにしている彼女の事など気にも留めず、ほんの微音で息を吸って続ける。
私は、なんてワガママなんだろう。
佐々木「............[太字]"生きる意味"[/太字]がほしいのかは知りませんけど、[太字]貴方いつからそんなに偉そうになったんですか[/太字]」
佐々木「人の足引っ張るような言葉を吐いて...........もっと、昔の貴方なら純真だったでしょう」
純真、それは彼女に一番似つかわしくないもの。
それでも、私の目で無邪気に映る貴方は[太字]『純真』であった。[/太字]
[太字]今思うならば、無邪気さとは一種の狂気というのは本物だったかもしれない。[/太字]
レモン「............何でそれを?」
彼女の顔が一瞬歪んだ。
真実だと告げている。
佐々木「他の皆が気づいていないだけなのか、はたまた黙ってるだけなのかは知りませんけど。」
佐々木「[太字]............もしかして、自分でも気づいていなかったんですか?[/太字]」
レモン「ん〜、私的には何も変わってないよ?」
『そんな訳ないじゃん』と言って彼女は笑うけれど、
[太字]笑いたい感情を持たないままに笑っている姿を演じているようにしか見えない。[/太字]
沸々と、ただ意識が別に吸い込まれる感覚がする。
いつしか冷静を保っていたはずの心は苛立ちから生む苛烈な茨に絡まる。
不愉快な気分が燃える。
日のような熱が身体を取り巻いて、渦巻き、帯びて、巡る。
意識が遠のく。
視界の狭間聞こえたものは、
「 結局お前は何も変わってねぇ 」
「 その腐った[漢字]幸災楽禍の精神[/漢字][ふりがな]シャーデンフロイデ[/ふりがな]無意識的でも変わんねぇんだな 」
そんな苛立ちと哀しさで語る、[太字]私の声[/太字]だった。