獣魔のあなたへ
イロハの森は俗に「原初の森」と呼ばれる獣魔や瘴気の多い森だ。
魔素の濃度が濃く、一般人には危険な森として知られていた。
「あ、あれは…」
森の最深部にある「世界樹」に、瘴気がまとわりついている。
世界を支える精霊樹の一つ、世界樹が瘴気に堕ちれば、世界に歪みが生じてしまう。
これ以上獣魔が増えると、手に負えなくなってしまうだろう。
「あっ!世界樹が倒れる!!逃げろ!!!」
強い魔素が仇となり、世界樹は瘴気の手に堕ちてしまった。
赤黒い血のような瘴気は、あの日を思い出させる。足がすくんで、動けない。
「隊長ー!!」
先に避難していた巫女が私の手を引いた。わざわざ戻ってきてくれたのだった。
「早く逃げよう。死んじゃうよ」
その一言で目が覚めた。私はまだ死んではいけない。
巫女とともに世界樹から、瘴気から逃げる。
「世界樹を暴かないと!!この森が崩壊してしまう!!みんな、急いで切り倒すよ!」
「おう!!」
今度は態勢を整えて全員が刀を抜き、世界樹と瘴気を切り離していく。
腕がしびれ、隙あらば瘴気が襲い掛かってくる。気を抜くことはできない。
数時間かけて世界樹の核までたどり着いた。
核を壊し、世界樹を消し去らなければいけない。
剣を思い切り突き立てた。
世界樹が消えていく。
瘴気は居場所を失い、魔素に取り込まれて消えた。
無事に帰還した私たちはそこで解散した。
私は与えられている自室へ戻り、巫女も寮へと帰っていった。
湯船につかって汚れと疲れを流すと、報告書と対峙する。
たまっている報告書は3件分。ここ最近出動の回数が多い気がする…。
「たいちょー、例のブツもってきたぜぃ」
巫女には入室権限を与えてある。
なぜ与えたのか、おそらく気の迷いだろう。
例のブツというのは―
「今夜は祝杯だ!!」
キンキンに冷えたビール。樽型の魔法器具で冷やされた黄金の液体が、私の心を洗ってくれる。
巫女はデスクに置かれた報告書と資料の山を見て、うげっという顔をした。
「どんだけあるの報告書。ためすぎでしょ」
「うん、最近件数が多くて…」
仕事の話からプライベートへ。酔いが回り、ろれつは回らなくなる。
巫女は酒に強いのか、2杯、3杯とおかわりしていく。
「巫女」
「なに?隊長」
「んーん、別に」
酔いが回り、記憶が曖昧に…
「隊長飲みすぎ。いや、飲まれすぎだよー」
「うーーん」
私はあろうことか巫女に抱き着いているらしい。いい匂いがする。
「ねえ、もうそろそろ帰んないと締め出されちゃうよー。隊長、帰るよー?」
「まだ、まだ帰るなぁー」
「え?泊まらせてくれんの?」
「ん」
「珍し。いっつも帰れって怒鳴るのに」
[小文字]「寂しいから…」[/小文字]
「はぁー」というため息が聞こえる。観念したらしい。
「帰らない?」
「帰らないよー。だからちょっと離れ…」
「やった。じゃあ寝るね。片づけよろしくー」
二度目のため息を聴きながら、視界がブラックアウトした。
魔素の濃度が濃く、一般人には危険な森として知られていた。
「あ、あれは…」
森の最深部にある「世界樹」に、瘴気がまとわりついている。
世界を支える精霊樹の一つ、世界樹が瘴気に堕ちれば、世界に歪みが生じてしまう。
これ以上獣魔が増えると、手に負えなくなってしまうだろう。
「あっ!世界樹が倒れる!!逃げろ!!!」
強い魔素が仇となり、世界樹は瘴気の手に堕ちてしまった。
赤黒い血のような瘴気は、あの日を思い出させる。足がすくんで、動けない。
「隊長ー!!」
先に避難していた巫女が私の手を引いた。わざわざ戻ってきてくれたのだった。
「早く逃げよう。死んじゃうよ」
その一言で目が覚めた。私はまだ死んではいけない。
巫女とともに世界樹から、瘴気から逃げる。
「世界樹を暴かないと!!この森が崩壊してしまう!!みんな、急いで切り倒すよ!」
「おう!!」
今度は態勢を整えて全員が刀を抜き、世界樹と瘴気を切り離していく。
腕がしびれ、隙あらば瘴気が襲い掛かってくる。気を抜くことはできない。
数時間かけて世界樹の核までたどり着いた。
核を壊し、世界樹を消し去らなければいけない。
剣を思い切り突き立てた。
世界樹が消えていく。
瘴気は居場所を失い、魔素に取り込まれて消えた。
無事に帰還した私たちはそこで解散した。
私は与えられている自室へ戻り、巫女も寮へと帰っていった。
湯船につかって汚れと疲れを流すと、報告書と対峙する。
たまっている報告書は3件分。ここ最近出動の回数が多い気がする…。
「たいちょー、例のブツもってきたぜぃ」
巫女には入室権限を与えてある。
なぜ与えたのか、おそらく気の迷いだろう。
例のブツというのは―
「今夜は祝杯だ!!」
キンキンに冷えたビール。樽型の魔法器具で冷やされた黄金の液体が、私の心を洗ってくれる。
巫女はデスクに置かれた報告書と資料の山を見て、うげっという顔をした。
「どんだけあるの報告書。ためすぎでしょ」
「うん、最近件数が多くて…」
仕事の話からプライベートへ。酔いが回り、ろれつは回らなくなる。
巫女は酒に強いのか、2杯、3杯とおかわりしていく。
「巫女」
「なに?隊長」
「んーん、別に」
酔いが回り、記憶が曖昧に…
「隊長飲みすぎ。いや、飲まれすぎだよー」
「うーーん」
私はあろうことか巫女に抱き着いているらしい。いい匂いがする。
「ねえ、もうそろそろ帰んないと締め出されちゃうよー。隊長、帰るよー?」
「まだ、まだ帰るなぁー」
「え?泊まらせてくれんの?」
「ん」
「珍し。いっつも帰れって怒鳴るのに」
[小文字]「寂しいから…」[/小文字]
「はぁー」というため息が聞こえる。観念したらしい。
「帰らない?」
「帰らないよー。だからちょっと離れ…」
「やった。じゃあ寝るね。片づけよろしくー」
二度目のため息を聴きながら、視界がブラックアウトした。
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