二次創作
集え、水禁学園!
009号室 〜《匿名》&サーシャ・クローチェ〜
「で、やはりキミの空気の読めない発言は持ちネタなのかい?」
「それ、そこまで気にすることだろうか」
ずっとそう聞くサーシャに少々呆れながらそう言う《匿名》は最早面倒くさそうにも見える。そんな彼が気に食わないのか、サーシャは食ってかかった。
「勿体ぶった割にはなんでもなかったり、話すタイミングが致命的に悪かったり...。あれが持ちネタでなく自然にやってることだとしたら、相当に友達が少なかったんだってことが窺えるよ」
「わざとやっているつもりはさらさらないのだが。それに私に友達がいたかどうかはおよそ関係することではないと思われる。そもそも友達という存在のあやふやさ、定義の曖昧さというべきか、ここははっきりしてもらいたい。私はそんな掴むことも叶わぬような実体のないものに振り回される願望は微塵も持っていないのでね。それよりも私は転移したことよりジョークかどうかを優先するサーシャ嬢に驚いているところだ」
「なるほど、大体分かったよ。キミには友人が少ないということを確信したよ。友人の定義を聞くような人間は友人を持たないというのは相場が決まっているからね。周知の事実と言ってもいいし、先ほど定義を問われた時には羞恥に震えたくらいさ」
やたら迂遠な言い回しを二人は何を勝負しているのかは知るところでないが、お互い負けじと言葉を交わす。その様子は他の部屋では見られないであろう有様で、全くもって終着点の見えない話を続けている。
「そもそもそれを言ったらサーシャ嬢、君も一人辺境で過ごしていたことから察するに友と呼べる人間が周りにいなかったのではないか?」
「...友とはどこからのことを言うのかな?質問は明瞭にしてもらわないと困るよ」
「おや。何かの相場が決まっていたらしいが、それは何だったかな?」
「キミはつくづく嫌なやつだね...。鬱陶しい言い回しにおいて右に出る者がいないのではないかと思ってしまうくらいだよ」
「そんなに褒めたところで何も出ないよ。私は発掘する側であってされる側ではないのでね」
終着点は見えないが、友についての不毛な言い争いをしていることだけは明白だった。その不毛さは、サボテンさえも生息できないのではないかと思わせるほどである。お互いがお互いの反論に乾いた笑いを見せる。
「全くもって褒めたつもりはないけれど、まあそれはいいよ。二人とも友についての証明手段はちっとも持ち合わせていないんだ。無駄な会話と言わざるを得ないね」
「それはごもっともだ。まともな意見に感謝するよ。きっともうこんな話をすることもないだろうけども」
「ボクも友を連れてキミに見せたい気持ちも山々なんだが、言葉で紹介するのが関の山だろうね。みっともないところをお見せして申し訳ないよ」
「全く、君の負けず嫌いは不治の病なのではないか?」
「ともするとそれは君にも当てはまるとも言えそうだけどね」
《匿名》は渾身の「[漢字]不治の病[/漢字][ふりがな]富士の山[/ふりがな]」が伝わらなかったことに対して不服そうに口を尖らせると、もうすぐ7時になりそうな時計の針を見て椅子に座る。一時休戦、となったかは分からないしどこでキリがつくのかも曖昧だが彼らは口を閉じ、夕食の転送を待った。止まないかとさえ思われた言葉の応酬は、いとも簡単に終わった。
[水平線]
010号室 〜雨傘 速秋&サーシャ・アクエリオス&デュランハル〜
「よし。カバンに押し込んでごめんな、デュランハル」
『(いや、いいさ。ボクが見えたらご主人様が警戒されるからね)』
「それもそうか、ありがとな。まあ部屋ではカバンから出すし、すぐに説明でも何でもして教室でも外に出してやる」
と、横でサーシャがぷくーっと膨れているのに気付く。俺は頭上にクエスチョンマークを浮かべながらサーシャに聞く。
「どうした、サーシャ」
「なんだか仲間はずれにされている気分です」
「はは、可愛いところもあるじゃないか」
「......」
「?」
「...... 大海原に溺れて、水中で藻掻いて、水底へ[打消し] [/打消し]」
「待て待て待てっ!」
流石サーシャ、伊達に俺に知らない土地で野垂れ死ぬ選択肢を与えていない。やることが違う。俺はそれでも恐れず揶揄ってみる。
「...そんなに混ざりたかったか?」
「いえ、私はデュランハルとお話がしたいのです」
お、俺はいらないのか...。俺はがっくりと肩を落とす。しかし話っつってもな。俺は胡座をかいてデュランハルを抱き抱えるようにする。サーシャは正面でちょこんと正座する。
「まあ翻訳じゃないが、俺を介して三人で話そうぜ」
「はい、それでいいです」
『(うん、ボクもサーシャと話したい)』
「そういえばデュランハルの性別はどちらですか?」」
『(女だよ)』
「女だってよ」
「へえ、そうなんですか!ヴェルダーさんと合わせてバランスが良いチームだったんですね!」
『(といっても、ボクはご主人様以外と話せないからほぼ三人みたいなものだろうけどね)』
「ご主人様以外とは話せないからほぼ三人だけど、だってよ」
「...え、ハヤアキはデュランハルに自分を『ご主人様』と呼ばせているんですか?」
「ちがっちげーよ!呼ばれているが呼ばせていない、ここには大きな違いがある」
『(ふふっ、やっぱり直接じゃなくても会話できるって楽しいね)』
戦いにおいて凄く助かる上に会話も弾む。デュラハンは怖かったが、出会えたことに感謝したい。なんなら戦闘で俺はデュランハルの役に立てているか不安になるレベルである。するとデュランハルは口に出していない俺の気持ちに答える。一心同体、心が繋がっているのだろうか。
『(ご主人様、武器は使ってもらってやっと能力が発揮できるんだ。ボクだけじゃ何もできないし、ご主人様だけでも弱いかもしれない。だからお互いを補い合って強くなるんだよ。誰もご主人様を弱いなんて思ってないから、ボクたちは二人で一つの力が出せるんだよ)』
「デュランハル...」
俺はデュランハルが急に愛おしくなって鞘を撫でた。するとまたもや「むーっ」とサーシャの不服そうな声。
「結局仲間はずれになった気がします」
『(そんなことないよ、ご主人様)』
「そんなことないよ、だってよ。......え、俺が仲間外れなの?」
いつの間に...。俺は頭を抱える。二人と一振りの談笑はその後も長い時間続いた。
「で、やはりキミの空気の読めない発言は持ちネタなのかい?」
「それ、そこまで気にすることだろうか」
ずっとそう聞くサーシャに少々呆れながらそう言う《匿名》は最早面倒くさそうにも見える。そんな彼が気に食わないのか、サーシャは食ってかかった。
「勿体ぶった割にはなんでもなかったり、話すタイミングが致命的に悪かったり...。あれが持ちネタでなく自然にやってることだとしたら、相当に友達が少なかったんだってことが窺えるよ」
「わざとやっているつもりはさらさらないのだが。それに私に友達がいたかどうかはおよそ関係することではないと思われる。そもそも友達という存在のあやふやさ、定義の曖昧さというべきか、ここははっきりしてもらいたい。私はそんな掴むことも叶わぬような実体のないものに振り回される願望は微塵も持っていないのでね。それよりも私は転移したことよりジョークかどうかを優先するサーシャ嬢に驚いているところだ」
「なるほど、大体分かったよ。キミには友人が少ないということを確信したよ。友人の定義を聞くような人間は友人を持たないというのは相場が決まっているからね。周知の事実と言ってもいいし、先ほど定義を問われた時には羞恥に震えたくらいさ」
やたら迂遠な言い回しを二人は何を勝負しているのかは知るところでないが、お互い負けじと言葉を交わす。その様子は他の部屋では見られないであろう有様で、全くもって終着点の見えない話を続けている。
「そもそもそれを言ったらサーシャ嬢、君も一人辺境で過ごしていたことから察するに友と呼べる人間が周りにいなかったのではないか?」
「...友とはどこからのことを言うのかな?質問は明瞭にしてもらわないと困るよ」
「おや。何かの相場が決まっていたらしいが、それは何だったかな?」
「キミはつくづく嫌なやつだね...。鬱陶しい言い回しにおいて右に出る者がいないのではないかと思ってしまうくらいだよ」
「そんなに褒めたところで何も出ないよ。私は発掘する側であってされる側ではないのでね」
終着点は見えないが、友についての不毛な言い争いをしていることだけは明白だった。その不毛さは、サボテンさえも生息できないのではないかと思わせるほどである。お互いがお互いの反論に乾いた笑いを見せる。
「全くもって褒めたつもりはないけれど、まあそれはいいよ。二人とも友についての証明手段はちっとも持ち合わせていないんだ。無駄な会話と言わざるを得ないね」
「それはごもっともだ。まともな意見に感謝するよ。きっともうこんな話をすることもないだろうけども」
「ボクも友を連れてキミに見せたい気持ちも山々なんだが、言葉で紹介するのが関の山だろうね。みっともないところをお見せして申し訳ないよ」
「全く、君の負けず嫌いは不治の病なのではないか?」
「ともするとそれは君にも当てはまるとも言えそうだけどね」
《匿名》は渾身の「[漢字]不治の病[/漢字][ふりがな]富士の山[/ふりがな]」が伝わらなかったことに対して不服そうに口を尖らせると、もうすぐ7時になりそうな時計の針を見て椅子に座る。一時休戦、となったかは分からないしどこでキリがつくのかも曖昧だが彼らは口を閉じ、夕食の転送を待った。止まないかとさえ思われた言葉の応酬は、いとも簡単に終わった。
[水平線]
010号室 〜雨傘 速秋&サーシャ・アクエリオス&デュランハル〜
「よし。カバンに押し込んでごめんな、デュランハル」
『(いや、いいさ。ボクが見えたらご主人様が警戒されるからね)』
「それもそうか、ありがとな。まあ部屋ではカバンから出すし、すぐに説明でも何でもして教室でも外に出してやる」
と、横でサーシャがぷくーっと膨れているのに気付く。俺は頭上にクエスチョンマークを浮かべながらサーシャに聞く。
「どうした、サーシャ」
「なんだか仲間はずれにされている気分です」
「はは、可愛いところもあるじゃないか」
「......」
「?」
「...... 大海原に溺れて、水中で藻掻いて、水底へ[打消し] [/打消し]」
「待て待て待てっ!」
流石サーシャ、伊達に俺に知らない土地で野垂れ死ぬ選択肢を与えていない。やることが違う。俺はそれでも恐れず揶揄ってみる。
「...そんなに混ざりたかったか?」
「いえ、私はデュランハルとお話がしたいのです」
お、俺はいらないのか...。俺はがっくりと肩を落とす。しかし話っつってもな。俺は胡座をかいてデュランハルを抱き抱えるようにする。サーシャは正面でちょこんと正座する。
「まあ翻訳じゃないが、俺を介して三人で話そうぜ」
「はい、それでいいです」
『(うん、ボクもサーシャと話したい)』
「そういえばデュランハルの性別はどちらですか?」」
『(女だよ)』
「女だってよ」
「へえ、そうなんですか!ヴェルダーさんと合わせてバランスが良いチームだったんですね!」
『(といっても、ボクはご主人様以外と話せないからほぼ三人みたいなものだろうけどね)』
「ご主人様以外とは話せないからほぼ三人だけど、だってよ」
「...え、ハヤアキはデュランハルに自分を『ご主人様』と呼ばせているんですか?」
「ちがっちげーよ!呼ばれているが呼ばせていない、ここには大きな違いがある」
『(ふふっ、やっぱり直接じゃなくても会話できるって楽しいね)』
戦いにおいて凄く助かる上に会話も弾む。デュラハンは怖かったが、出会えたことに感謝したい。なんなら戦闘で俺はデュランハルの役に立てているか不安になるレベルである。するとデュランハルは口に出していない俺の気持ちに答える。一心同体、心が繋がっているのだろうか。
『(ご主人様、武器は使ってもらってやっと能力が発揮できるんだ。ボクだけじゃ何もできないし、ご主人様だけでも弱いかもしれない。だからお互いを補い合って強くなるんだよ。誰もご主人様を弱いなんて思ってないから、ボクたちは二人で一つの力が出せるんだよ)』
「デュランハル...」
俺はデュランハルが急に愛おしくなって鞘を撫でた。するとまたもや「むーっ」とサーシャの不服そうな声。
「結局仲間はずれになった気がします」
『(そんなことないよ、ご主人様)』
「そんなことないよ、だってよ。......え、俺が仲間外れなの?」
いつの間に...。俺は頭を抱える。二人と一振りの談笑はその後も長い時間続いた。