二次創作
集え、水禁学園!
『ドッペルゲンガー』
教室の一角。先頭で窓側のサーシャ・トリニダの席には、計11人のサーシャが囲うように集まっていた。その席に座っているのは本人でなく、幼いサーシャである。トリニダは優しいのか、自分に甘いと言った方がいいのか。少々疑問に思うところであるが、それを気にする者はいなかった。何故ならサーシャ全員はスライムサーシャのとある一言に興味を持っていかれたからである。
「みんなは『ドッペルゲンガー』って知ってる?」
皆の反応を待つことなく、砂漠で器用に変身したままの姿で言葉を続ける。
「そのドッペルゲンガーのことなんだけど。この世界には自分にそっくりな人が、自分を含めて三人存在しててね。そのうち二人が出会っちゃうと死んじゃうんだって...!」
「へっ、し、死っ!?」
サーシャが声を上げたことで丸山がそちらへ視線を向けるが、談笑しているだけか、とまた自分たちの会話に戻る。スライムサーシャはそんなサーシャの反応に満足げに頷いた。
「うん、死んじゃうの。で、今私たちは何人いる?」
「11人ですね」
「ありがと、ガヴディーネちゃん。早いね」
「いえ。でも11人って...」
「この中の10人が死ぬわけですか。私は誰が相手でも容赦しませんよ」
「うっわウォーテルちゃん落ち着いて、殺し合うというより現象的な話だから。...殺さないでよ?」
その言葉は何故かウォーテルだけでなくトビウオを召喚したサーシャ(以下トビウオサーシャ)にも向けられているように見えた。トビウオサーシャはそれに露ほども気付くことなく、話に耳を傾けている。スライム討伐をしようとした前科を忘れてしまったのだろうか。
「で、私たち11人が同時に会った結果、現象が処理落ちしたんじゃないかって」
「え、処理落ちって何ですか?」
「あ、ごめん。簡単に言えば追いつかないって意味ね」
「ありがとうございます」
新たな知識を授けたスライムサーシャに対し、丁寧に礼を言うアクエリオス。しかし当のスライムサーシャは、いらないこと教えちゃったな......と少し後悔の念を覚えていた。まあそんなことはいい、とでも言うかのように話が戻される。
「つまりね......」
「つまり......?」
ごくりと喉を鳴らす音がする。スライムサーシャはそんな皆の返しを受けて、順に顔を見ていき、もったいぶる。
「追いついたら、死んじゃうんじゃないかな...ってことかな?」
「あっ私に言わせてよクローチェちゃん!空気が読めないのは《匿名》くんだけにしてよ!」
《匿名》のくしゃみが教室に響く。そして《匿名》はサーシャの集団の方へと目をやり、得意げに呟いた。
「どうやらあちらで私の噂でも生まれているようだ」
「や、どっちかと言うと悪ぐ...やっぱり何でもないよ」
「なんだいティアラ嬢。言ってみたまえ」
「いやー?急に言いたいこと忘れちゃったなー、おかしいね!あははは」
下手な誤魔化し方をするティアラに怪訝な目を向ける《匿名》をよそに、サーシャ会は盛り上がる。
「じゃあ誰が生き残るかじゃんけんで決めましょう」
「軽い!軽すぎるよトリニダちゃん!」
「...では実力行使?」
「ちっちゃいサーシャちゃんが不憫すぎるよトリニダちゃん!」
そんな会話を静かに見守っていたクリスタロスが、ゆっくりと口を開いた。もっと活発なイメージではなかったか、そう思いながらも誰も突っ込むことなくそれを待つ。
「ワタシが今聞いた限りでは、ドッペルゲンガーとは同一世界で自然発生したものを指すようです。そして今の私たちの状況は、別世界から無理やり引っ張られたようなものであり、別人といえば別人です。言わば同じ名前を冠しただけの者が集まっているだけです。よってその現象が成立しない可能性の方が高いように思われます。...あ、思うんだ!わたしは!」
いきなり失敗を取り繕うように感情を二倍近く跳ね上げるクリスタロス。既に手遅れな気もするが、やはりサーシャ達はドッペルゲンガーにご執心。些細なことであった。椅子にちょこんと座りながら数年後の自分の姿たちを見上げるサーシャは、おどおどと自信なさげな声を出す。
「じゃ、じゃあ私たちはみんな安心していいの?」
「うーん、そうだね!みんな安心安全!誰も死なないよ、怖がらせてごめんね!」
「ほんとですか!じゃあボクとランの仲は引き裂かれませんね!」
「そうだね、いやそこしか考えてないの...?」
サーシャ達は楽しそうに騒ぐ。クリスタロスもその輪の中に入っているはずだが、どこか達観した風に笑みを浮かべる。そして決して口に出すことなく思った。
そもそも私は死者だから、生きているサーシャは偶数人なんですけどね、と。
[水平線]
『水属性のジョーク使い』
丸山は水城のことを見ていた。何故だろうか。丸山の脳内に水城の言葉がいつまでもリフレインする。『水に流す』という水ジョーク、丸山はこれを遥かに早い段階でサーシャに言っていた。リベンジである。これは自己紹介で少し日和って、ジョークが言えなかった自分との勝負である。
丸山がぼーっとしていたからだろうか。水城は少し心配そうに彼を見る。
「おい丸山、大丈夫か?」
「ん?あ、ああ。別に何もないけど」
「そっか、ならいいけど。でも困ったら言ってくれよ。同じ転移者だからな」
水城はそこまで言って、意地の悪い笑顔を見せた。丸山がそれに戸惑う間もなく言葉を続けた。
「あんまり[漢字]水臭い[/漢字][ふりがな]・・・[/ふりがな]こと言わずにな」
っ!?コイツ、やりやがったぞ...!なら俺もやってやるよ、と丸山も引き攣った笑みを浮かべた。田中がそんな二人を訳がわからないといった風に見つめる。
「何か雰囲気がピリピリしてない?」
ここだ!田中の言葉のお陰でジョークを挟む余地が生まれた。
「おいおい、ジョークを言おうと思ってたのに口挟むなよ...せっかくのアイデアが[漢字]水の泡[/漢字][ふりがな]・・・[/ふりがな]じゃねぇか」
「え、僕責められてる?」
「感謝してるよ」
「...何で?」
田中を置いてけぼりにして、会話を進める。
「まあ皆こんなとこに連れてこられて不安だと思うからな、ありがとな」
「いやいや、俺も不安だから。自己満足だよ」
「そうだぜ、こんな[漢字]見ず[/漢字][ふりがな]・・[/ふりがな]知らずの人間がいっぱいなのに」
「確かにこんな状況、[漢字]寝耳に水[/漢字][ふりがな] ・・・・[/ふりがな]だもんね」
「はっ!宮沢にティアラ!?」
思わぬ刺客に驚きを見せる二人。更に間髪入れず他も参戦する。
「おい宮沢、そこの争いに入るなんて向こう[漢字]見ず[/漢字][ふりがな]・・[/ふりがな]だな」
「雨傘まで!?」
やはり言葉遊びの文化が豊富だったからだろうか。日本人の参戦率が高い。そこに《匿名》が割って入る。それはいつもの空気の読めない発言かのように思われた。
「すまない、その争いに何の意味があるんだ?私には分からないな。...[漢字]水を差す[/漢字][ふりがな]・・・・[/ふりがな]ようで悪いが」
「みんな、なんていうかあれだよね...。この話題になってから[漢字]水を得た魚[/漢字][ふりがな]・・・・・[/ふりがな]みたいだよね」
「僕は文字通り現在進行形で水を得てる魚だよ」
流水までもが参戦する。元から異世界組も何か空気を感じ取る。キマはスルーされたトビウオを値踏みするかのようにじいっと見ると、フッと笑った。
「今のトビウオの発言のせいで場が[漢字]水を打ったよう[/漢字][ふりがな]・・・・・・・[/ふりがな]になったよ」
「僕を貶すかダジャレ言うかどっちかにしてよ!いや貶さないでよ!」
「そうだ。そんな[漢字] 冷や水を浴びせる[/漢字][ふりがな]・・・・・・・・[/ふりがな]ようなこと、言うべきじゃない」
一番言いそうになかったヨウもボソッと呟く。この空気に我慢ができなかったのだろう。最早これは二人の勝負などではなくなっていた。もう田中以外は水属性のジョークを言い終えている。皆は期待に満ちた目で田中を凝視する。それに怯えたように後ずさるが、全員がそれを追いかけて逃げ場を与えない。
「ど、どうすればいいのん?」
「どうってそりゃ...水属性のジョークだろ」
「えーっと、あーっと......あ!さっきから思ってたんだけどさ、丸山くんと水城くんって正に[漢字]水と油[/漢字][ふりがな] ・・・[/ふりがな]だよね!」
二人はそれを聞いて驚きの表情を見せた。それを見て顔を不安の色に染める田中。
「え、なんかダメだった?」
「水と...」
「油...」
「それって俺が水魔法使いで、丸山が火属性であることを踏まえてるんだよな!?」
「え、別に...」
「まじかすげぇな!負けたよ」
「いや、だから」
「...あの、さっきからうるさいですね」
ヒュッとそれはそれは冷たい風が吹き抜けた、そんな気がした。その風の発生源と思われる方にギギギ...と首を動かすと、暖かさを感じない、見る者を凍らせてしまいそうな視線を向けるウォーテルがいた。
「日本、でしたっけ?他のサーシャさんたちもご一緒に滅ぼしませんか?」
「ちょいちょいストップ落ち着いて?」
「なんで止めるんですかスライムサーシャさん。したり顔で呟く彼らを見てください。無性に腹が立ちませんか?」
「いやまあ、それは確かにムカつくけど...」
「サーシャ達ならマジで滅ぼせちゃいそうだから止めてね?」
その後も彼ら彼女らによる滅ぼす滅ぼさないの水掛け論は続いたそうな。
教室の一角。先頭で窓側のサーシャ・トリニダの席には、計11人のサーシャが囲うように集まっていた。その席に座っているのは本人でなく、幼いサーシャである。トリニダは優しいのか、自分に甘いと言った方がいいのか。少々疑問に思うところであるが、それを気にする者はいなかった。何故ならサーシャ全員はスライムサーシャのとある一言に興味を持っていかれたからである。
「みんなは『ドッペルゲンガー』って知ってる?」
皆の反応を待つことなく、砂漠で器用に変身したままの姿で言葉を続ける。
「そのドッペルゲンガーのことなんだけど。この世界には自分にそっくりな人が、自分を含めて三人存在しててね。そのうち二人が出会っちゃうと死んじゃうんだって...!」
「へっ、し、死っ!?」
サーシャが声を上げたことで丸山がそちらへ視線を向けるが、談笑しているだけか、とまた自分たちの会話に戻る。スライムサーシャはそんなサーシャの反応に満足げに頷いた。
「うん、死んじゃうの。で、今私たちは何人いる?」
「11人ですね」
「ありがと、ガヴディーネちゃん。早いね」
「いえ。でも11人って...」
「この中の10人が死ぬわけですか。私は誰が相手でも容赦しませんよ」
「うっわウォーテルちゃん落ち着いて、殺し合うというより現象的な話だから。...殺さないでよ?」
その言葉は何故かウォーテルだけでなくトビウオを召喚したサーシャ(以下トビウオサーシャ)にも向けられているように見えた。トビウオサーシャはそれに露ほども気付くことなく、話に耳を傾けている。スライム討伐をしようとした前科を忘れてしまったのだろうか。
「で、私たち11人が同時に会った結果、現象が処理落ちしたんじゃないかって」
「え、処理落ちって何ですか?」
「あ、ごめん。簡単に言えば追いつかないって意味ね」
「ありがとうございます」
新たな知識を授けたスライムサーシャに対し、丁寧に礼を言うアクエリオス。しかし当のスライムサーシャは、いらないこと教えちゃったな......と少し後悔の念を覚えていた。まあそんなことはいい、とでも言うかのように話が戻される。
「つまりね......」
「つまり......?」
ごくりと喉を鳴らす音がする。スライムサーシャはそんな皆の返しを受けて、順に顔を見ていき、もったいぶる。
「追いついたら、死んじゃうんじゃないかな...ってことかな?」
「あっ私に言わせてよクローチェちゃん!空気が読めないのは《匿名》くんだけにしてよ!」
《匿名》のくしゃみが教室に響く。そして《匿名》はサーシャの集団の方へと目をやり、得意げに呟いた。
「どうやらあちらで私の噂でも生まれているようだ」
「や、どっちかと言うと悪ぐ...やっぱり何でもないよ」
「なんだいティアラ嬢。言ってみたまえ」
「いやー?急に言いたいこと忘れちゃったなー、おかしいね!あははは」
下手な誤魔化し方をするティアラに怪訝な目を向ける《匿名》をよそに、サーシャ会は盛り上がる。
「じゃあ誰が生き残るかじゃんけんで決めましょう」
「軽い!軽すぎるよトリニダちゃん!」
「...では実力行使?」
「ちっちゃいサーシャちゃんが不憫すぎるよトリニダちゃん!」
そんな会話を静かに見守っていたクリスタロスが、ゆっくりと口を開いた。もっと活発なイメージではなかったか、そう思いながらも誰も突っ込むことなくそれを待つ。
「ワタシが今聞いた限りでは、ドッペルゲンガーとは同一世界で自然発生したものを指すようです。そして今の私たちの状況は、別世界から無理やり引っ張られたようなものであり、別人といえば別人です。言わば同じ名前を冠しただけの者が集まっているだけです。よってその現象が成立しない可能性の方が高いように思われます。...あ、思うんだ!わたしは!」
いきなり失敗を取り繕うように感情を二倍近く跳ね上げるクリスタロス。既に手遅れな気もするが、やはりサーシャ達はドッペルゲンガーにご執心。些細なことであった。椅子にちょこんと座りながら数年後の自分の姿たちを見上げるサーシャは、おどおどと自信なさげな声を出す。
「じゃ、じゃあ私たちはみんな安心していいの?」
「うーん、そうだね!みんな安心安全!誰も死なないよ、怖がらせてごめんね!」
「ほんとですか!じゃあボクとランの仲は引き裂かれませんね!」
「そうだね、いやそこしか考えてないの...?」
サーシャ達は楽しそうに騒ぐ。クリスタロスもその輪の中に入っているはずだが、どこか達観した風に笑みを浮かべる。そして決して口に出すことなく思った。
そもそも私は死者だから、生きているサーシャは偶数人なんですけどね、と。
[水平線]
『水属性のジョーク使い』
丸山は水城のことを見ていた。何故だろうか。丸山の脳内に水城の言葉がいつまでもリフレインする。『水に流す』という水ジョーク、丸山はこれを遥かに早い段階でサーシャに言っていた。リベンジである。これは自己紹介で少し日和って、ジョークが言えなかった自分との勝負である。
丸山がぼーっとしていたからだろうか。水城は少し心配そうに彼を見る。
「おい丸山、大丈夫か?」
「ん?あ、ああ。別に何もないけど」
「そっか、ならいいけど。でも困ったら言ってくれよ。同じ転移者だからな」
水城はそこまで言って、意地の悪い笑顔を見せた。丸山がそれに戸惑う間もなく言葉を続けた。
「あんまり[漢字]水臭い[/漢字][ふりがな]・・・[/ふりがな]こと言わずにな」
っ!?コイツ、やりやがったぞ...!なら俺もやってやるよ、と丸山も引き攣った笑みを浮かべた。田中がそんな二人を訳がわからないといった風に見つめる。
「何か雰囲気がピリピリしてない?」
ここだ!田中の言葉のお陰でジョークを挟む余地が生まれた。
「おいおい、ジョークを言おうと思ってたのに口挟むなよ...せっかくのアイデアが[漢字]水の泡[/漢字][ふりがな]・・・[/ふりがな]じゃねぇか」
「え、僕責められてる?」
「感謝してるよ」
「...何で?」
田中を置いてけぼりにして、会話を進める。
「まあ皆こんなとこに連れてこられて不安だと思うからな、ありがとな」
「いやいや、俺も不安だから。自己満足だよ」
「そうだぜ、こんな[漢字]見ず[/漢字][ふりがな]・・[/ふりがな]知らずの人間がいっぱいなのに」
「確かにこんな状況、[漢字]寝耳に水[/漢字][ふりがな] ・・・・[/ふりがな]だもんね」
「はっ!宮沢にティアラ!?」
思わぬ刺客に驚きを見せる二人。更に間髪入れず他も参戦する。
「おい宮沢、そこの争いに入るなんて向こう[漢字]見ず[/漢字][ふりがな]・・[/ふりがな]だな」
「雨傘まで!?」
やはり言葉遊びの文化が豊富だったからだろうか。日本人の参戦率が高い。そこに《匿名》が割って入る。それはいつもの空気の読めない発言かのように思われた。
「すまない、その争いに何の意味があるんだ?私には分からないな。...[漢字]水を差す[/漢字][ふりがな]・・・・[/ふりがな]ようで悪いが」
「みんな、なんていうかあれだよね...。この話題になってから[漢字]水を得た魚[/漢字][ふりがな]・・・・・[/ふりがな]みたいだよね」
「僕は文字通り現在進行形で水を得てる魚だよ」
流水までもが参戦する。元から異世界組も何か空気を感じ取る。キマはスルーされたトビウオを値踏みするかのようにじいっと見ると、フッと笑った。
「今のトビウオの発言のせいで場が[漢字]水を打ったよう[/漢字][ふりがな]・・・・・・・[/ふりがな]になったよ」
「僕を貶すかダジャレ言うかどっちかにしてよ!いや貶さないでよ!」
「そうだ。そんな[漢字] 冷や水を浴びせる[/漢字][ふりがな]・・・・・・・・[/ふりがな]ようなこと、言うべきじゃない」
一番言いそうになかったヨウもボソッと呟く。この空気に我慢ができなかったのだろう。最早これは二人の勝負などではなくなっていた。もう田中以外は水属性のジョークを言い終えている。皆は期待に満ちた目で田中を凝視する。それに怯えたように後ずさるが、全員がそれを追いかけて逃げ場を与えない。
「ど、どうすればいいのん?」
「どうってそりゃ...水属性のジョークだろ」
「えーっと、あーっと......あ!さっきから思ってたんだけどさ、丸山くんと水城くんって正に[漢字]水と油[/漢字][ふりがな] ・・・[/ふりがな]だよね!」
二人はそれを聞いて驚きの表情を見せた。それを見て顔を不安の色に染める田中。
「え、なんかダメだった?」
「水と...」
「油...」
「それって俺が水魔法使いで、丸山が火属性であることを踏まえてるんだよな!?」
「え、別に...」
「まじかすげぇな!負けたよ」
「いや、だから」
「...あの、さっきからうるさいですね」
ヒュッとそれはそれは冷たい風が吹き抜けた、そんな気がした。その風の発生源と思われる方にギギギ...と首を動かすと、暖かさを感じない、見る者を凍らせてしまいそうな視線を向けるウォーテルがいた。
「日本、でしたっけ?他のサーシャさんたちもご一緒に滅ぼしませんか?」
「ちょいちょいストップ落ち着いて?」
「なんで止めるんですかスライムサーシャさん。したり顔で呟く彼らを見てください。無性に腹が立ちませんか?」
「いやまあ、それは確かにムカつくけど...」
「サーシャ達ならマジで滅ぼせちゃいそうだから止めてね?」
その後も彼ら彼女らによる滅ぼす滅ぼさないの水掛け論は続いたそうな。