二次創作
集え、水禁学園!
各部屋でそれぞれが、それぞれの朝を迎える。そんなことでさえも、人によってその数だけバリエーションがある。早めに支度を済ませていた者に目覚ましに起こされた者、ペアに起こされる者や揃ってぐっすり眠っている者。集まれば集まるだけそこにはたくさんの物語があり、そして、どれも尊い。
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最終、教室に付かなければならない時間は8時30分。そんな中、7時30分に一番初めに教室へと踏み込んだのは
「よっしゃ一番乗り!」
「ま、丸山っ、は、はしゃぎすぎ」
「だってなんか嬉しくない?」
「じゃ、じゃあボクが起こした、から。...ボ、ボクの勝ち」
「案外やる気があるな」
丸山とサーシャだ。子供らしく騒ぐ丸山を少し恥ずかしそうに、しかし嬉しそうに鎮めるサーシャ。二人は楽しそうに会話しながら左のグラウンド(砂漠)側の前から二番目の席へと向かう。ちなみにこのサーシャ、非日常に張り切って5時半に起きたのである。早く起きたところですることもないのに、ずっとそわそわしていたサーシャを丸山は見逃したのだった。
丸山たち以外に誰もいない教室には、水平線から完全に顔を出した太陽の光が差しこんでいて、それぞれの机を明るく照らす。その輝きは生徒一人一人の期待を表しているようで、丸山はサーシャとこの景色をふたりじめできたことに満足して笑みを浮かべた。
「な、なんで笑ってるの?」
「いや、何でもない」
「?」
丸山たちが教室へ入ってから20分が経過した。廊下に響くリズミカルな足音は教室まで届く。ガラガラ、と戸の開く音がする。丸山とサーシャは無意識にそちらへと目をやると、入ってきた二人と目が合った。
「ぐあっ、先客がっ!」
「一体何時に来たんでしょうか」
挨拶よりも前にやはり着順を気にするその様子に、皆考える事は同じだなと苦笑しながら丸山は挨拶した。
「宮沢とガヴディーネさんだよね。おはよう」
「あ、おっおはようございます」
「ああ、おはよう。丸山にサーシャさん」
「はい、ガヴディーネです。おはようございます」
口々に挨拶する四人。教室は二人増えるだけでも随分賑やかになる。他の人との接触に暖かみを感じながら、二人きりの時間が終わったことにどこか寂しさを感じる。それは丸山も宮沢も、どちらのサーシャも同じだった。
しかしサーシャは後から入ってきた二人の間に何か違和感を感じ取った。お互い目を合わせていないというかなんというか、気まずそうだ。
「あ、あのっお二人は、昨日、なっ何かあったんですかっ?」
唐突になされた質問。しかしそれは彼らの肩をビクッと震わせた。丸山はその様子に怪訝な表情を見せつつ、サーシャに言う。
「突然何聞いてんだ?」
「だ、だって、何かおかしく感じた、から」
「まあ、確かに言われてみれば...?」
言いながら目線を横にスライドさせると、やはりそこにはお互い顔も見ずにもじもじしている姿がある。少しずつ興味が湧いてきた丸山は意地悪そうな笑みを浮かべる。
「で、どうしたんだ?」
「ど、どうって言われてもなぁ...」
「は、はい特に何もありませんでしたけど」
やはり特に何も無かった反応じゃないように思えるけどな。軽い冗談のつもりで言葉を続ける丸山。
「何でそんな恥ずかしそうなんだ?別に裸を見た訳じゃあるまいし」
あくまで表現として発されたその言葉は、二人にクリティカルヒットした。不自然に慌てふためき始める二人は、言葉を探す。
「はっ⁉︎は、裸って、そそ、そんなわけないだろ、なぁサーシャ?」
「え、ええ、当然です!わ、私たちはまだそんな関係じゃありませんよ」
「いや、まだって何だよ」
「っ⁉︎私何言って」
え、何その反応、マジで裸見たの?そう言いたい気持ちをグッと堪えた丸山はそのまま言葉を飲み込んだ。初めに質問したサーシャは「ごめんなさい...」なんて小声で呟いている。しかし、折角丸山が飲み込んだ言葉は他から聞こえてくることとなる。
「え、裸見たの?」
「こら、何てこと言うんですか」
しまった、あまりにも突然の情報に反射的に反応してしまった。即座にサーシャにも注意され、デュランハルにも咎められる。
『(ご主人様、直球すぎだよ。もうちょっとデリカシー持つべきだよ)』
しかし雨傘は仕方ないのでは?と思うのであった。反射は人間の意志でどうこうできる代物ではない。だって脊髄が司令出すんだぞ。無理でしょ。とはいえ今の雨傘の言葉によって、宮沢とサーシャが耳まで朱に染まっているのは間違いなく、少しだけ反省する。
そんな絶望的状況に宮沢は嘆く。嗚呼、二日目でいきなり俺とサーシャの噂が広まるのだろうか。どうすればここで火を収められるだろう。しかしながら何かをすればするほど状況が悪化する気もして、特にどうすることもできない二人である。そうこうしているうちに教室の黒板の上にかけられた時計の針は8時を少し超えていた。
そのタイミングで廊下からいくつかの話し声がし、開いたままのドアから複数人入ってきた。基本この時間帯で皆は来るのだろう。だがお陰で助かったかもしれない。上手く話題を逸らせれば勝ちだ。
宮沢はぞろぞろと入ってくるクラスメイトの方へ向くと、爽やかに挨拶する。サーシャもそれに乗っかる。そうして一時的かもしれないが、取り敢えず宮沢とサーシャの火消しは成功したのだった。
こうして殆どの生徒が集まり、支度が整った者たちはそれぞれ自分の席の近くで言葉を交わしている。すると8時20分、もうすぐタイムアップとなる時間に
「おはよー」
と伸びた声が聞こえる。皆ドアへと顔を向けるがそこには何もいない。それぞれが不思議に思っている中、田中が「あ」と声を上げた。
「どうしたんですか?」
「いやあれ、上の窓からティアラさんが」
田中の言う通り、ドアではなくてその上。律儀にもヨウがその高い背を活かし、換気するために開けた窓からティアラは入ってきていた。そして、全員の意識がドア周辺に集まったところで妙な音が教室内に響く。今度はその正体に気づいたのはサーシャ・クリスタロスであった。
「ドアの...下に」
ミチミチ音を立てて隙間から何かが染み込んでいた。
「スライム、サーシャさん......?」
誰かが言う。それに乗っかるように口を開いたのは《匿名》である。
「何故二人とも普通にドアから入ってくるんだい?」
まともな意見の筈だが、その横にいるサーシャは頭痛でもするのか、頭を抑えてポツリと呟いた。
「そこはキミでも突っ込むんだね...」
「当たり前だろう、おかしなことなのだから」
「基準が...基準が分からない...!」
するとスライムが《匿名》の疑問に答えるため口を開い...てはいないが、声を発した。
「ティアラが折角人間じゃないんだから、自分達にしかできないことで注目を集めようって」
「どう?びっくりした?」
自慢げに胸を反らすティアラは微笑んだ。パタパタと忙しなく動かす羽が、イタズラに成功した子供のような無邪気さを想起させる。
そうしていると今度は前のドアが開く。朝から元気な彼女は、昨日と違い酔っている風ではなかった。と言っても、誰にも昨日の彼女に本当に酒が入っていたのかは分からないのだけれど。
「おっはよう、生徒諸君!揃っているかねー?」
言いながら黒板の前の教壇に手を置いて前傾姿勢になる女性はイングリットだ。初めて着るであろう「ザ・女教師」という感じの服装は誰から見ても似合っている。そうして教室を見渡すイングリット。彼女はその視線をある席で止めると首を傾げた。
「そこ、誰だっけ?」
「あ」
何かを忘れていたようであるサーシャ。そこに皆の視線も集まる。そしてサーシャはあははーと申し訳なさそうに頭を掻いて言った。
「すみませんー、私がトビウオを持ってくるの忘れてましたー」
「ん、今すぐ連れてきなさい」
「お、今の先生っぽい」
「少年は黙って座っていなさい」
サーシャはイングリットの言葉を受けると席を立ち、小走りで寮へと向かっていった。
それからすぐにチャイムが鳴る。廊下から急いでいるような足音が聞こえるが、鳴り終わるまでに扉が開かれる事はなかった。
ガラガラ、と乱暴に戸の開く音がする。水槽から水を跳ねさせながら息を切らすサーシャに、トビウオは文句を言う。
「僕をトビウオにしたのは取り敢えず置いておいてもさ、せめて面倒見てよ」
「いえ、そのー......はい、すみません」
サーシャは言い訳をしたかったのか、考えを巡らせるために視線をあちこちに彷徨わせる。しかし何も思いつかなかったか、素直に謝った。
「二人とも、チャイムは鳴っているぞー。席についてー」
「はい、すみません」
サーシャは水槽を大事そうに抱えて自分の席へ向かうと、隣にトビウオの入った水槽を丁寧に置いて座った。イングリットは不満そうに口を尖らせて、腕を組むと少しだけ声音を変えて注意した。
「いきなり遅刻とはいい度胸だな。明日からは速く来い、トビウオ少年」
「僕ですか⁉︎僕が悪いんですか⁉︎」
イングリットの言葉に納得のいっていない様子のトビウオだったが、それを見た彼女はふっと破顔する。
「冗談だ。次からは気をつけたまえー、サーシャ」
「はい...」
サーシャと呼ばれ、それぞれピクリと反応するサーシャたち。やはり何かと不便そうである。
イングリットは何やら廊下を気にしている様子であったが、その理由はすぐに分かった。
「昨日言った転校生が来てるから、今から簡単に自己紹介してもらおう。二人とも、入ってきてー」
ドアが、ゆっくりと開かれた。
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最終、教室に付かなければならない時間は8時30分。そんな中、7時30分に一番初めに教室へと踏み込んだのは
「よっしゃ一番乗り!」
「ま、丸山っ、は、はしゃぎすぎ」
「だってなんか嬉しくない?」
「じゃ、じゃあボクが起こした、から。...ボ、ボクの勝ち」
「案外やる気があるな」
丸山とサーシャだ。子供らしく騒ぐ丸山を少し恥ずかしそうに、しかし嬉しそうに鎮めるサーシャ。二人は楽しそうに会話しながら左のグラウンド(砂漠)側の前から二番目の席へと向かう。ちなみにこのサーシャ、非日常に張り切って5時半に起きたのである。早く起きたところですることもないのに、ずっとそわそわしていたサーシャを丸山は見逃したのだった。
丸山たち以外に誰もいない教室には、水平線から完全に顔を出した太陽の光が差しこんでいて、それぞれの机を明るく照らす。その輝きは生徒一人一人の期待を表しているようで、丸山はサーシャとこの景色をふたりじめできたことに満足して笑みを浮かべた。
「な、なんで笑ってるの?」
「いや、何でもない」
「?」
丸山たちが教室へ入ってから20分が経過した。廊下に響くリズミカルな足音は教室まで届く。ガラガラ、と戸の開く音がする。丸山とサーシャは無意識にそちらへと目をやると、入ってきた二人と目が合った。
「ぐあっ、先客がっ!」
「一体何時に来たんでしょうか」
挨拶よりも前にやはり着順を気にするその様子に、皆考える事は同じだなと苦笑しながら丸山は挨拶した。
「宮沢とガヴディーネさんだよね。おはよう」
「あ、おっおはようございます」
「ああ、おはよう。丸山にサーシャさん」
「はい、ガヴディーネです。おはようございます」
口々に挨拶する四人。教室は二人増えるだけでも随分賑やかになる。他の人との接触に暖かみを感じながら、二人きりの時間が終わったことにどこか寂しさを感じる。それは丸山も宮沢も、どちらのサーシャも同じだった。
しかしサーシャは後から入ってきた二人の間に何か違和感を感じ取った。お互い目を合わせていないというかなんというか、気まずそうだ。
「あ、あのっお二人は、昨日、なっ何かあったんですかっ?」
唐突になされた質問。しかしそれは彼らの肩をビクッと震わせた。丸山はその様子に怪訝な表情を見せつつ、サーシャに言う。
「突然何聞いてんだ?」
「だ、だって、何かおかしく感じた、から」
「まあ、確かに言われてみれば...?」
言いながら目線を横にスライドさせると、やはりそこにはお互い顔も見ずにもじもじしている姿がある。少しずつ興味が湧いてきた丸山は意地悪そうな笑みを浮かべる。
「で、どうしたんだ?」
「ど、どうって言われてもなぁ...」
「は、はい特に何もありませんでしたけど」
やはり特に何も無かった反応じゃないように思えるけどな。軽い冗談のつもりで言葉を続ける丸山。
「何でそんな恥ずかしそうなんだ?別に裸を見た訳じゃあるまいし」
あくまで表現として発されたその言葉は、二人にクリティカルヒットした。不自然に慌てふためき始める二人は、言葉を探す。
「はっ⁉︎は、裸って、そそ、そんなわけないだろ、なぁサーシャ?」
「え、ええ、当然です!わ、私たちはまだそんな関係じゃありませんよ」
「いや、まだって何だよ」
「っ⁉︎私何言って」
え、何その反応、マジで裸見たの?そう言いたい気持ちをグッと堪えた丸山はそのまま言葉を飲み込んだ。初めに質問したサーシャは「ごめんなさい...」なんて小声で呟いている。しかし、折角丸山が飲み込んだ言葉は他から聞こえてくることとなる。
「え、裸見たの?」
「こら、何てこと言うんですか」
しまった、あまりにも突然の情報に反射的に反応してしまった。即座にサーシャにも注意され、デュランハルにも咎められる。
『(ご主人様、直球すぎだよ。もうちょっとデリカシー持つべきだよ)』
しかし雨傘は仕方ないのでは?と思うのであった。反射は人間の意志でどうこうできる代物ではない。だって脊髄が司令出すんだぞ。無理でしょ。とはいえ今の雨傘の言葉によって、宮沢とサーシャが耳まで朱に染まっているのは間違いなく、少しだけ反省する。
そんな絶望的状況に宮沢は嘆く。嗚呼、二日目でいきなり俺とサーシャの噂が広まるのだろうか。どうすればここで火を収められるだろう。しかしながら何かをすればするほど状況が悪化する気もして、特にどうすることもできない二人である。そうこうしているうちに教室の黒板の上にかけられた時計の針は8時を少し超えていた。
そのタイミングで廊下からいくつかの話し声がし、開いたままのドアから複数人入ってきた。基本この時間帯で皆は来るのだろう。だがお陰で助かったかもしれない。上手く話題を逸らせれば勝ちだ。
宮沢はぞろぞろと入ってくるクラスメイトの方へ向くと、爽やかに挨拶する。サーシャもそれに乗っかる。そうして一時的かもしれないが、取り敢えず宮沢とサーシャの火消しは成功したのだった。
こうして殆どの生徒が集まり、支度が整った者たちはそれぞれ自分の席の近くで言葉を交わしている。すると8時20分、もうすぐタイムアップとなる時間に
「おはよー」
と伸びた声が聞こえる。皆ドアへと顔を向けるがそこには何もいない。それぞれが不思議に思っている中、田中が「あ」と声を上げた。
「どうしたんですか?」
「いやあれ、上の窓からティアラさんが」
田中の言う通り、ドアではなくてその上。律儀にもヨウがその高い背を活かし、換気するために開けた窓からティアラは入ってきていた。そして、全員の意識がドア周辺に集まったところで妙な音が教室内に響く。今度はその正体に気づいたのはサーシャ・クリスタロスであった。
「ドアの...下に」
ミチミチ音を立てて隙間から何かが染み込んでいた。
「スライム、サーシャさん......?」
誰かが言う。それに乗っかるように口を開いたのは《匿名》である。
「何故二人とも普通にドアから入ってくるんだい?」
まともな意見の筈だが、その横にいるサーシャは頭痛でもするのか、頭を抑えてポツリと呟いた。
「そこはキミでも突っ込むんだね...」
「当たり前だろう、おかしなことなのだから」
「基準が...基準が分からない...!」
するとスライムが《匿名》の疑問に答えるため口を開い...てはいないが、声を発した。
「ティアラが折角人間じゃないんだから、自分達にしかできないことで注目を集めようって」
「どう?びっくりした?」
自慢げに胸を反らすティアラは微笑んだ。パタパタと忙しなく動かす羽が、イタズラに成功した子供のような無邪気さを想起させる。
そうしていると今度は前のドアが開く。朝から元気な彼女は、昨日と違い酔っている風ではなかった。と言っても、誰にも昨日の彼女に本当に酒が入っていたのかは分からないのだけれど。
「おっはよう、生徒諸君!揃っているかねー?」
言いながら黒板の前の教壇に手を置いて前傾姿勢になる女性はイングリットだ。初めて着るであろう「ザ・女教師」という感じの服装は誰から見ても似合っている。そうして教室を見渡すイングリット。彼女はその視線をある席で止めると首を傾げた。
「そこ、誰だっけ?」
「あ」
何かを忘れていたようであるサーシャ。そこに皆の視線も集まる。そしてサーシャはあははーと申し訳なさそうに頭を掻いて言った。
「すみませんー、私がトビウオを持ってくるの忘れてましたー」
「ん、今すぐ連れてきなさい」
「お、今の先生っぽい」
「少年は黙って座っていなさい」
サーシャはイングリットの言葉を受けると席を立ち、小走りで寮へと向かっていった。
それからすぐにチャイムが鳴る。廊下から急いでいるような足音が聞こえるが、鳴り終わるまでに扉が開かれる事はなかった。
ガラガラ、と乱暴に戸の開く音がする。水槽から水を跳ねさせながら息を切らすサーシャに、トビウオは文句を言う。
「僕をトビウオにしたのは取り敢えず置いておいてもさ、せめて面倒見てよ」
「いえ、そのー......はい、すみません」
サーシャは言い訳をしたかったのか、考えを巡らせるために視線をあちこちに彷徨わせる。しかし何も思いつかなかったか、素直に謝った。
「二人とも、チャイムは鳴っているぞー。席についてー」
「はい、すみません」
サーシャは水槽を大事そうに抱えて自分の席へ向かうと、隣にトビウオの入った水槽を丁寧に置いて座った。イングリットは不満そうに口を尖らせて、腕を組むと少しだけ声音を変えて注意した。
「いきなり遅刻とはいい度胸だな。明日からは速く来い、トビウオ少年」
「僕ですか⁉︎僕が悪いんですか⁉︎」
イングリットの言葉に納得のいっていない様子のトビウオだったが、それを見た彼女はふっと破顔する。
「冗談だ。次からは気をつけたまえー、サーシャ」
「はい...」
サーシャと呼ばれ、それぞれピクリと反応するサーシャたち。やはり何かと不便そうである。
イングリットは何やら廊下を気にしている様子であったが、その理由はすぐに分かった。
「昨日言った転校生が来てるから、今から簡単に自己紹介してもらおう。二人とも、入ってきてー」
ドアが、ゆっくりと開かれた。